『江戸の智恵 「三方良し」で日本は復活する』
養老孟司(ようろう たけし)・徳川恒孝(とくがわ つねなり)
株式会社PHP研究所 2010年9月発行・より
<徳川> 現在の生活水準からすれば、江戸の職人衆はとても貧乏でした。
でも、彼らのなかには、親方になるぐらい腕のいい職人たちがたくさんいた。
ところが当時は、金儲けのためにあくせく働く人はごく少数で、
それもそうとう根性の曲がった人だと思われていたようです。
<養老> 貧しくても、楽しそうな感じがありますね。
<徳川> 当時、江戸で行われていた年中行事を、一月から十二月までずらりと書き連ねた本がありますが、それを見ると、ほとんど仕事をする暇がない(笑)。
だいたい江戸の職人たちは、一日六時間ぐらいしか働いていなかったようです。
一応、明日のメシが食えて、ちょっとお酒が飲めて、コロッと寝ることができればそれでいい、と彼らは思っていたのです。
しかも 「明日は花火だ」 とか、「今日はいよいよ三社祭のお祭りだ」
「酉の市に買物に行かなければいけない」 とか、
年中やることが山のようにあったから、彼らはあまり金持ちになるために、あくせく働く気持ちがなかったのではないかと思います。
5月7日 光が丘 四季の香ローズガーデン(東京・練馬)にて撮影