「江戸の遺伝子 いまこそ見直されるべき日本人の知恵」
徳川恒孝(とくがわ つねなり 1940~)
PHP研究所2007年3月発行・より
武士と武士以外の農工商という明確な階級制度がある中で、
その支配階級であった武士たち (全人口の五%から七%が武士階級でした) が時を経るに従って貧しくなり、
一方で農工商階級がどんどん経済的な力を増して豊な社会を作ったというのも大変に珍しいことです。
外国人にこの話をしますと、大体の方は誠に擬わしげな顔をされます。
「 トクガワさん。支配階級である武士たちが、
絶対的な立法権と司法権と行政権と、 軍事・警察権を持っていれば、
その階級に社会全体の富が集まってくるのは世界の常識です。
トプカピ宮殿でも故宮博物館でもヴェルサイユ宮殿でもロンドン塔でも皆そうです。
日本だけが違うと言われても信じられません。
アナタのところにも当然卵くらいのダイヤモンドか金貨の山か何かあるはずです。
アナタは税務署が怖いから、 そんな話をするのですか? それならよくわかりますが 」
というのが彼らの言い分です。
それほど武士の政治感覚というのはユニークなものであったということなのですが、
西欧人に説明するのはなかなか難しいことです。
本当に何もないことを言えば言うほど擬わしそうに見られます。
いまでも時々 「徳川埋蔵金」 を探索している方からお手紙を頂きます。
夫々(それぞれ)の御趣味の問題ですから特段に申し上げることもなく、
ただ見つかったら御連絡をください、と申し上げますが、
一向に連絡はありません。
11月16日 中央公園(埼玉・朝霞)にて撮影