「アメリカが畏怖した日本 真実の日米関係史」
渡部昇一(わたなべ しょういち 1930~)
株式会社PHP研究所 2011年6月発行・より
アメリカが基地を置く場所は沖縄より台湾のほうがいい。
日本の敗戦時に、それを実現する機会があった。
日本が領有していた台湾は清国の実効支配がなかったのだから、
敗戦のとき、中国へ返したのではなく、放棄しただけである。
したがって、「台湾は中国のものではない」 といってアメリカ軍が進駐すればよかったのだ。
それをしなかったのは、アメリカに原因がある。
アメリカは中国に同情し、「悪の権化」 というようなレッテルを日本に貼った。
それだけに、日本がやったことを無視したいという気持ちがありすぎた。
現在でもウイグルやチベットについてはいろいろ言及するのに、
満州民族のことをまったく口に出さない。
万里の長城の北側は満州族のものであり、
満州族は清国という大きな帝国をつくった。
その民族が消されかけているのに黙っている。
それは日本を叩くために 「満州国が悪い」 といったから、
アメリカは口を出せなくなったのだと私は見ている。
日本が台湾を放棄したとき、アメリカが日本の言い分を認め、
自分のメンツを引っ込めれば、台湾を何の問題もなく支配下におくことができた。
そして第二のハワイのようにすることもできたであろう。
少なくとも蒋介石が台湾に逃げ込んだ頃でも基地を置くことは可能だった。
当時、中国はアメリカに対抗する力がなかったので、簡単だったはずだ。
いまから考えると、アメリカも大政治家がいたわけではないということである。
昨年11月20日 光が丘公園(東京・練馬)にて撮影