『こうして、2016年、「日本の時代」が本格的に始まった』
日下公人 (くさか きみんど 1930~)
ワック株式会社 2016年2月発行・より
「日本の実力」 というと、政府の力を思い浮かべる人もいるかもしれないが、
日本の実力は、政界ではなく民間にある。
私はずっとビジネス界にいたからよく知っているが、
戦後に鉄鋼、電力、石炭、海運が回復したのは、
通産省が主導した奇跡の回復などではない。
すべて国民が働き、復興させてきたものだ。
通産省はその果実を貢がせて、勝手に自分たちの手柄としただけである。
もし、当時、私が総理大臣だったら、国に対して貢がせたりせずに、
もっと民間を回復させていたと思う。
その頃の私はまだ三十代だったから、何の発言力もなかったが、
自分で統計を見ていたから、通産省がウソをついていることは明らかに分かった。
通産省に騙されて、マスコミは 「戦前は非常に暗い時代で、みんなが苦しかった。戦後に、通産省の指導で日本経済は奇跡の回復をした。戦後に日本は明るくなった」
と言っていたが、誰もその検証をしていないし、吟味もしていない。
戦前のことを本当に知っている人間は、「戦前の日本は暗かった」 というのがウソだと分かっている。
通産省も農林省も、自分たちの力で戦後に日本が復活したかのように言っていたが、
戦前から日本は明るかったし、戦後の復興を成し遂げたのは民間である。
通産省や農林省の役人たちは、自分たちに都合よく『通産白書』『農林白書』を書いてきた。
『建設白書』も同じである。
それをマスコミが鵜呑(うの)みにしたから、役所の主導で、日本が復活したかのように誤解されているだけだ。
『通産白書』も『農林白書』も『建設白書』も、お手盛りの自画自賛(じがじさん)にすぎない。
私は、経済を復活させたと言われる吉田総理も池田総理も議論に値しないと思っている。日本の民間の力を褒めていないからだ。
戦後に、日本の民間がどんなに一所懸命に働いて、お互いに信用し、助け合って、きちんとビジネスをやってきたかという点を言うべきである。
日本の国民は頭がよく、しかも一所懸命に働いてきたから、
戦前も戦後も民間の力で着実に実力を高めてきた。
ずっと高度成長国だった。 グラフを書けばわかる。
今後も民間が力を発揮すれば、日本はさらに伸びる。
10月29日 中央公園(埼玉・朝霞)にて撮影