「援助と感謝」曽野綾子 | 人差し指のブログ

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高村正彦外相は、つまりパレスチナ人たちが、日本の援助を認識し感謝することを望まれたのだろうと思うが、

私の体験は全く違うものであった。


 当時最大の援助国はアメリカで、日本がその次だったと記憶するが、

キャンプの中のインテリである 或る女性教師は、口を極めてアメリカの悪口を言った。

それで私はつい不愉快になって、「そんなに嫌いなアメリカから、あなたはどうして援助を受けるのですか」 と質問した。

すると彼女は急にいきり立ってアラブ語でまくしたてたが、私はこういうこともあろうかと思い、

アラブ語のわかる女性(正確にいうと日本国籍を取得したレバノン人)を臨時の秘書として同行していた。

このアラブ女性の話によると、女性教師は、「アメリカは自分たちがパレスチナ人に対して悪いことをしているという自覚があるから償いのために金を出すのだ。そういう相手からはもっと取ってやればいい」 と言ったのである。


感謝どころか、金を出すのは相手がやましく思っているから出すので、もっと取るべきだ、

という考え方もパレスチナ人にはあるのである。


日本的反応でパレスチナ人は金を出してくれる国には感謝するだろうな、などと思ったら、大きな間違いである。
『それぞれの山頂物語』



「日本人が知らない世界の歩き方」
曽野綾子(その あやこ 1931~)
PHP研究所2006年10月発行・より


中央公園付近(埼玉・朝霞)にて7月24日撮影