「大地」パール・S・バック(米国人)
中国の歴史を題材とした1931年の小説
「日本に生まれてまあよかった」
平川すけ弘(すけは示+右1931年~)
株式会社新潮社2014年発行・より
しかしさらに注目すべきは中国人の反応で
中国人の知識人は農民という中国の恥部(ちぶ)が
さらされたと抗議しました
「大地」は国民党時代の中国でもあまり読まれず
人民中国では禁書となった
そこで不思議な反応が生じました
善良な中国農民を描いたこの本は
アメリカで親中感情を呼びさまし
反射的に悪玉としての日本のイメージ形成に貢献しました
日本の侵略に苦しむ負け犬で犠牲者である中国が
アメリカの同情を惹いたのです
ところがその同じころ 日本の読者は[大地」を読んで
中国農民の人間性に共感し中国各地に割拠する軍閥の支配に
苦しむ中国人民のため大陸に東洋永遠の平和を確立し
当時の日本の宣伝にいうところの「王道楽土(おうどうらくど)
を建設することこそが わが皇軍の使命であると思い込んで
いました
愚かですが当時の新聞を読んでそう思い込んでいたのです
1938年 バックにノーベル賞が授与されました
そのころ彼女はアメリカで編集者ウォルシュと再婚し
親中の立場で反日活動を精力的におこなっていました
すると 日本から当時としては珍しい国際電話がかかってきて
日本の雑誌に新年のメッセージを書いてくださいと依頼された
日本ではバックはアジアを理解する 日本の味方であるという
見方が支配的だったのです
日本の外国理解はその程度でした
ただバック自身は戦後 自分の本の印税は
日本からはたくさん はいるが
中国からは はいらないという事実に接して
かつての見方を改めたようです
光が丘(東京・練馬)11月17日撮影