さようなら、私の友達 パグ | ひとさんと愉快な仲間たち

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愉快な仲間、6匹の猫と外猫たち

友美 は、今、小学3年生です。家は、山里にあります。

春から、秋にかけて農業をして、冬になるとおじいさんは猟師(りょうし)として、山に入ります。

そのため、たくさんの猟犬(りょうけん)たちを飼っていました。

ポーンターや、ビーグル犬、日本犬、10匹ほどの犬がいました。

友美は、犬といっしょに育ちました。だから犬は大好きで兄弟のように思っていました。



 ある日の事でした。友美の向いの空屋(あきや)にあか犬が住みつきました。

しばらくして、あか犬が子犬をたくさん産みました。

友美は、かわいい子犬を見たくて、見たくてしかたがありません。

でも、おかあさん犬は、近づくと歯をむき出して、うなるのです。

友美は、あか犬が人になれるようにと、毎日エサをあげに行きました。

何日、何ヶ月たっても、あか犬は友美になれようとはしません。

友美は、おじいちゃんに聞きました。

「どうして、あか犬は人になれないの?」

おじいちゃんは、「もともと、野良犬だから、人にはなつかへんわ。」と言いました。

友美は、「ふ~ん、野良犬だから人とは仲良くなれないのかな?。」

友美は、なんか悲しくなりました。同じ犬なのに仲良しになれないなんて…。


 

 あか犬と友達になれないまま、なんか月がたちました。

あか犬の子どもたちも、大きくなり、空家の床下(ゆかした)で、走りまわったり、

じゃれたりしているのが、わかるようになりました。

でも、あいかわらず出てきてはくれません。

ある日のこと、友美が学校からの帰り道、空家の近くにさしかかると

「キャン、キャン、キャ~ン!」子犬の鳴き声というか、さけび声が聞こえるではありませんか。

あわてて、走っていくと そこには、子犬がセメント袋の下じきになって、苦しんでいるのです。

セメント袋は、空家の庭に工事用に置いてあったものです。セメント袋は、20kあります。

小学3年の友美にとっては、それはとても重たく、へこたれそうになりました。

どっと汗が、流れ出してきました。それでも子犬を助けたい思いで必死で、

そして全身の力をこめて、どけることができました。やっと、子犬を助けることができたのです。

友美は、助けた子犬を抱き上げ

「よかった。けがしていなっくて。はやくお母さんのところへおかえり」

そう言って、床下にもどそうとしましたが、子犬はうれしかったのか、はなれようとせず、

いつまでも友美の顔を、なめていました。


その日から、子犬は友美になついて、仲良くなりました。子犬は、「パグ」と名前をつけました。

パグという種類の犬に似ていたところから、思いついたのです。

パグは、名前を呼ぶと床下から出てくるようになり、ご飯をあげに行くと、

そのまま友美の家に着いてくる様になりました。そして、しまいには友美のうちの子になりました。

暑い夏が過ぎ、秋が来ました。

パグと友美はいつも、稲刈りの終わった田んぼで日が暮れるまで遊びました。

パグと走りっこもしました。ボール投げもしました。

楽しい日々が続き、友美もパグも幸せでした。そして、このままずっと仲良しでいたいと思いました。

ところが、友美の家にはたくさんの猟犬たちがいたので、しばらくたっておじいさんは、

パグのもらい手をさがしてきました。

となり村のおじさんが、やってきて、

 「良い犬やな。気に入った。うちで飼うから、連れて帰るわ。」

友美は、パグとわかれるのは、とっても悲しかったけどいい人にもらってもらえるんだから、

パグにとっては幸せだと自分に言い聞かせました。

本当は、仲良しのパグとは別れたくはなかったのですが。

おじさんがお礼を言って、パグを抱いて連れて帰ろうとしました。

友美は、「おじさん、パグを可愛がってあげてね。お願い。」

おじさんは、「よっしゃ、わかった大事にするわ。」そう言って歩き出しました。

友美は、手をふりました。そして、友美の目から、涙がこぼれました。

その涙でパグのすがたが、かすんで見えました。

歩いていくおじさんの姿が小さく、小さく、なるまで手を振りました。

パグとおじさんが、見えなくなる頃、友美は心の中で叫びました。

「さようなら!私の友達 パグ、幸せにね。」

友美は、その場を離れることが出来ずいつまでも立っていました。

 気が付くと、あたりは、夕焼けの空でした。