参考資料323 | シフル・ド・ノストラダムス

シフル・ド・ノストラダムス

ノストラダムスの暗号解読

問題
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平行四辺形ABCDの内部にEをとり、Eを通るAB,BCの平行線とABCDとの交点を図のようにP,Q,R,Sとし、ARとCPの交点をFとする時、3点D,E,Fは一直線に並ぶことを証明せよ。
一見、超難問に見えますが、定理3.3を上手に使えば簡単に証明できます。
定理3.3
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平行四辺形ABCDに対し、平行四辺形APES=平行四辺形CQERとなるのは、Eが対角線上にある時であり、またその場合に限る。
(注(希暮):証明は省略するが、FからAB,BCと平行な線分を引き、定理3.3をまず平行四辺形ABRSに使い、次に平行四辺形PBCQに使い、最後にDFを対角線に持つ平行四辺形で使うと証明出来る。)
すばらしい証明だったでしょう。これは小平邦彦先生の「幾何のおもしろさ」(岩波数学入門シリーズ7)というステキな数学の本に載っていた定理と証明です。小平先生自身は、秋山武太郎先生の「幾何学つれづれ草」という本から転載したのだそうです。その紹介のページで小平先生は、秋山先生の次のような言葉もついでに附記しています。「今、これを発表するのは如何にも惜しいが本書の愛読者に呈する微意として掌中の玉を手放すことにした。一,二年後にはこの愛児が下らぬ俗書に載せることもあろうかと暗涙を禁ぜざるを得ない。」このような言葉も忘れずに転載した小平先生のユーモア感覚が、筆者はとても好きです。
ちょっと話は変りますが、「数学の定理には、どうして著作権がないのだろう。」と、つねづね思います。もしあれば、ピタゴラス家は大富豪になっていたことでしょうし、ニュートン財団やガウス財団というものができあがって、数学界のソニーやホンダとなっていたのではないでしょうか。そんな下らぬ妄想を下じきに、筆者は今、SF小説を書いている途中ですが、きっと日の目を見ずに終るでしょう。
「高校への数学・解法のスーパーテクニック」小島寛之著より

感想
「幾何学つれづれ草」の復刻版は私も持っている。因みに、大正8年の本だが1993年に復刻されたらしい。http://sshmathgeom.private.coocan.jp/transf/transformationindex.html

>今、これを発表するのは如何にも惜しいが本書の愛読者に呈する微意として掌中の玉を手放すことにした。一,二年後にはこの愛児が下らぬ俗書に載せることもあろうかと暗涙を禁ぜざるを得ない。

私もよく別証明を作るが、例えばトレミーの定理の初等幾何の別証明を作ったが、電子書籍が売れないので日の目を見る事はないだろう。因みに、円に内接する四角形の対角線の長さの公式は普通三角関数で証明するが、これも初等幾何の証明を作ってある。そんな事より底辺の拡大と全体のレベルアップ(受験に合格するための一時的な学力ではない)をして欲しいね。あえて言えば、江戸時代の和算。(この問題も別解が作れるので数学に自信がある人は挑戦してみてね。http://math.a.la9.jp/aen4.htm(一番下のもやしさん。))

補足
衝撃の事実が判明。「幾何学つれづれ草」には確かにこの言葉は載っているが、違う証明法であった。多分、この証明法は小平邦彦先生のオリジナルであろう。因みに、円を3個も使うマニア中のマニアの解法。一応証明前の文を全文載せておく。
「さて、これから述べる証明は、今日までただの一人も明らかにしないで深くかくしおいた会心の秘蔵の解である。実は、初めこの解を得たときはその方法がやや迂遠にして複雑であったため、半月ほど経た後再び思い起こそうととしても思い出さず、屑籠などまで探して前日の反故を求めて僅かに保留し得た。その節、さらに解法の理路を仔細に検査し推敲して簡単なものに研き上げたものである。いまこれを発表するのはいかにも惜しいが、本書の愛読者に呈する微意として掌中の玉を手放すことにした。一二年後の後にはこの愛児が下らない俗書に載せられることもあろうかと思うと、うたた暗涙を禁じえない。」(190ページにある証明だが、改めて読むと凄い。)
(私の解法は、△ABRと直線PCでメネラウスの定理を使いその後△RSAと直線FDでメネラウスの定理の逆を使うというもの。)

補足2 11/2 9:00
その後、小平邦彦先生の「幾何のおもしろさ」を入手して調べた所、ちゃんと秋山武太郎先生の証明法が載っていて(p.182)、欄外にその文章が載っていた。また、上の定理3.3とその証明法はp.304~p.306(定理136,例題23,24)が載っていて、これを利用して小島寛之先生が上の問題を証明したのだと思われる。(念のため、他意はないと思う。)ただし、この問題自体は「幾何学つれづれ草」にも「幾何のおもしろさ」にも直接は載っていなく改造摘出した問題である。
一応その文章を載せておく。
「秋山武太郎:幾何学つれづれ草,231-232ページ.この証明に附記された秋山先生のコメントが当時の雰囲気を伝えて興味深いと思うので、その一部を引用する。:‘さて、これから述べる証明は今日までただの一人にも明かさずして深く秘し置きたる会心の秘蔵の解である.今これを発表するのは如何にも惜しいが本書の愛読者に呈する微意として掌中の玉を手放すことにした.一,二年の後にはこの愛児が下らぬ俗書に載せられることもあろうかと暗涙を禁ぜざるを得ない.’」
(私の持っている「幾何学つれづれ草」は表現を現代風にに直した復刻版なのでページ数とか異なるのだろう。)

おまけ