6章70番の詩の解釈 | シフル・ド・ノストラダムス

シフル・ド・ノストラダムス

ノストラダムスの暗号解読

6章70番の詩
Au chef du monde le grand Chyren sera,
Plus outre apres ayme, criant, redoute':
Son bruit & los les cieux surpassera,
Et du seul tiltre victeur fort contente. (ノストラダムスサロンの原文)
大いなるシーレンが世界の主となろう
『プリュ-ウルトル』が愛され 畏怖されしのちに
彼の名声 称賛は天も超え
彼は勝者の称号のみで大いに満足する (山根和郎 訳)

Au chef du monde le grand Chyren sera,
Plus oultre apres aymé,craint,redoubté:
Son bruit & loz les cieulx surpassera,
Et du seul tiltre victeur fort contenté. (ラメジャラー本の原文)
訳の解説
「chef」(指導者)、「au」(英語で言う所の「to theまたはat the」)、「monde」(世界,人々)、「du」(英語で言う所の「of the」)、「le」(英語で言う所の「the」)、「grand」(大きい,偉大な)、「sera」(英語で言う所のBe動詞の三人称単数の未来形)、「plus」(英語で言う所の「more,most」,より以上のこと,プラス)、「oultre」(oultreは古語辞典で「outre」と同一とされていて「Par-dessus(~の上から,~を越えて,~の上に),au-delà de(~の向こうに,~の先に,~の以上に,~を越えて),de l'autre côté de(「l'autre côté」で「あの世,彼岸」))、因みに、「Plus oultre」の所はかなり多くの異文で「PLVS OVTRE」とされていて、ノストラダムスは言葉遊びで「u」と「v」などをよく入れ替えるので「PLUS OUTRE」でここからは私の憶測だが文法的におかしいので「Plus outré」とすると「より極端な」(10年以上前はこう訳した)(ロバーツ本では「outre」となっている)、「apres」(「après」(英語で言う所の「after」の古語))、「aymé」(これもよく使われる言葉遊びで「y」と「i」を入れ替えると「aimé」で「aimer」(愛する)の過去分詞)、「craint」は1694年の辞書から1877年の辞書まで載っているがノストラダムスは1500年代の人なので多分「crainte」(恐れ,心配,危惧,畏敬,畏怖)の事。(これだったら1606年の辞書から載っているし古語辞典では多分1080年か1112年頃からある)、「redoubté」は「redoubter」の過去分詞だが、1606年の辞書には載っているが何故か古語辞典には載っていない。ノストラダムスの大事典では「redoubté」は「慄(おのの)かれた」と訳している。(1606年の辞書は古語辞典に載っていない古語ばかりでうまく訳せないが、「craindre」(恐れる)の文字が窺えるので多分正解。)また、ロバーツ本では「redoute」となっているので(ノストラダムスサロンの原文でもそうなっている(redouté)が、何故かノストラダムスの大事典の異文には入っていない)、「redouter」の過去分詞で訳すと「ひどく恐れられる」(10年以上前はこれで訳した)、「son」(彼の,彼女の,その)、「bruit」(うわさ,風評,評判,名声,評価)、「loz(los)」(古語辞典に「gloire」(栄光,名誉,名声,誇り,功績,敬意,賛美,称賛),「honneur」(名誉,信義,貞節,栄誉,敬意),「renommée」(名声,高名,世評,風評),「louange」(称賛,名誉,手柄,功績))、「cieulx」は古語辞典の「ciel」の項の古語の文章に窺えるのでcielの複数形「cieux」の古語である事は間違いない。「空,天,天国,神」。「les」(英語で言う所の「the」の複数形)、「surpassera」は「surpasser」(勝る,しのぐ,上回る,びっくりさせる,越える)の三人称単数の未来形、「et」(英語で言う所の「and」)、「seul」(英語で言う所の「only,alone」(ただ一つの,単独の,~だけ,ひとりでに,助けなしで,一人だけ,一つだけ,唯一の人)、「tiltre」は古語辞典で「titre」と同一とされていて「titre」は「称号,爵位,尊称,肩書,資格,タイトル」、「fort」(英語で言う所の「strong」(強い,強く,大いに,など)、「contenté」(「contenter」(満足させる)の過去分詞)、「victeur」は何故か古い辞書の横断検索ではヒットしないが、古語辞典の「victoire」の項に「victeur」とあり「Vainqueur」とあるので「勝利者,征服者,勝利者の」。

あえて無理に訳すと、

世界の指導者に偉大なシーランがなるだろう
より極端な愛された後畏怖されひどく恐れられる(愛された後彼岸を越えて畏怖されひどく恐れられる)
彼の名声と称賛(彼は)神々を越えるだろう
そして勝利者(征服者)の称号のみに大いに満足させられる

解説
ノストラダムスは聖書とリンクさせた詩をよく書くので、この詩も「黙示録の獣」に関しての詩と考える。2行目のカッコの解釈は比喩。黙示録の獣は「つるぎの傷」といって「死ぬほどの傷」を受けるがその傷も治ってしまい、全地の人々は驚きおそれてその獣に従う(「ヨハネの黙示録」第13章3節・14節)。3行目は、「Son bruit & loz」(彼の名声と称賛)を主語にすると動詞が三人称単数なので合わない。そこで「彼」を主語にした。最後の「満足させられる」とした所は「満足する」にしようかと思ったが、「満足する」は代名動詞の「se contenter」なので止めた。因みに、黙示録の獣は二人いて「地からの獣」は「海からの獣」(初めの獣)が満足するような事を行う。つまり「満足させられる」。

おまけ