面会 | きちがいピエロ  

きちがいピエロ  

あたしは未婚子持ち女 (▼皿▼#)



そんなあたしの忘れられないこれまでの出来事を、



いつか振り返ってみる日のために記録として綴っておこう・・・。

 やっと面会できたのは拘留されてから約2週間後だった。







おっさんは、

「よぉ、元気にしとるか?」と、笑顔で言った。










 話が前後するが、

事件はちょうど私とおっさんのラウンジがオープンする1ヶ月前のことだった。



開店準備はほぼ整っていて、

出来上がった新しい名刺に、

私とおっさんの名前が並んで入ってることがうれしくて、

何度も何度も名刺を見てはありえない将来を想像しながら夢を膨らませていた。






 久しぶりに見るおっさんの顔は

いつものおっさんと同じだった。



透明の仕切り越しから私に向かって

「心配かけてすまんかったな」と、

一言。



 もちろん事件の詳細については聞けなかった。

横にぽりこまんがいたのでそんな話はできないのだ。








 店のオーナーとして経営サポートしてくれるはずだったが、

できなくなったこと、

店舗契約についてのもろもろの話、

今後のこと・・・。

短時間のうちにいろいろ話た。







そして最後にこう言った。



  「いいか、もう面会にはくるな。

毎日嫁が着替えを届けに来る。

お前にあわせるわけにはいかない。

いまさらだが、家族が大切なんだ、

何より息子が。

店は、お前の好きなようにやればいい。

嫌気がさして疲れたらやめてしまえ。すべてお前のもんだ。」










 今となってはどのように反応したのか

はっきりと思い出せないが、

おっさんの言葉を聴いてただ固まってしまっていたように思う。













  「私は待ってるよ、ずっと待ってるし。

お店がんばって、帰ってくるまで、ずっとがんばってまってるから。」





 「お前はまったくw

俺が出てきたときはお前はもぉおばはんやないかw

俺は若いねぇちゃん専門やw



 ええか、店はイヤになったらすぐにたため。

そして実家に帰って自分のこれからのことを考えろ。

ええな、わかったな」










 おっさんはそう言いながら警官に促されて席を立った。

時間がきたのだ。










 帰り際、担当者にさしいれのタバコ代を預けた。

が、すぐにおっさんのでかい声が聞こえた。





「金は腐るほどあるから心配せんでええぞ。

なにも持ってこんでええからな。」





 受け取り拒否という形で担当者が封筒を返しにきた。



私はそれを握り締めてどうにか歩いてマンションに帰った。







 帰った後、どのようにしてその日をすごしたのかはっきりと思い出せない。

 ただただつらくて何もできなかった。








鬱状態、そして薬物依存。

物事を前向きに考えることができなかった。

混濁とした日々が始まった。











 面会拒否されながらも、

未決囚の間、私は毎日面会に行った。

少しでも顔がみたくて。





あとで聞いたのだが、

私が来て帰っていくところをおっさんは取調室の窓から見ていたらしい