【① 名画を見るというより、「なんか気になる」から始まった】
ウィーン美術史美術館へ。
有名な作家の作品が目白押しの美術館。
私はそんなに詳しくないのだけれど そんな私でもワクワクの美術館です。
建物自体も素晴らしかった。
入ってすぐ、右にはエジプト・ギリシャ・ローマ、左には美術工芸品の展示。
でも今日の目的は絵画なので、正面の大階段を上がる。
ここは各部屋にソファがあり じっくり鑑賞できる素晴らしい美術館でした。
最初の部屋でなぜか一枚だけ、妙に気になる絵があった。
女性が大きな竜を踏みつけるように立っている。
説明を見ると、ラファエロの《聖マルガレータ》だった。
ラファエロだから気になったわけではなく、
先に「この絵、なんか好き」と思って、
後から名前を知った。
こういう順番って面白いなと思う。
有名だから見るのではなく、
自分の目が先に反応する。
聖女は怪物を前にしているのに、全然怯えていない。
むしろ堂々としている。
古代ローマの勝利の女神のような立ち姿だと知って、
なるほどと思いました。
私はどうも、静かだけど強い女性像に目が行くようです。
【② 絵の中の「変なところ」が気になって仕方がない】
その後も、有名かどうかより、
「何これ?」と思う絵ばかりに引っかかった。
モレット・ダ・ブレシアの絵では、
豪華なオリエント風の服を着た女性の横で、
男性が手を合わせて彼女を見上げている。
しかも、その男性の手が灰色っぽい。
もちろん美術史的に
「灰色の手=罪の汚れ」と決まっているわけではない。
でも私は、
この人は何か汚れたことをしてきて、
清らかな女性に許しを乞うているように見えた。
勝手な解釈です(笑)。
でも、美術館ってこういう見方をしてもいいんだと思う。
パリス・ボルドーネの《剣闘士の戦い》も面白かった。
古代ローマのはずなのに、
建物は全部盛り。
左の柱はくねくねしているし、
戦士たちは妙に薄い、シースルーみたいな服を着ている。
「いやいや、こんな格好で戦わないでしょう」と思ってしまう(笑)。
でもこれは古代ローマの正確な再現ではなく、
16世紀の人が想像した「壮大な古代ローマ」だそうです。
昔の人が作ったスペクタクル映画みたいで面白い。
【③ ルーベンスはちょっと苦手。でも肖像画は好き】
ルーベンスの部屋に入ると、
急に絵の中の肉体がこちらに迫ってくる。
裸の人、人、人。
動物もいる。
天使も飛ぶ。
みんな動いている。
上手いのはわかる。
すごいのもわかる。
でも私は、ちょっと気持ち悪さを感じました。
好きとか嫌いではなくて、
生命が多すぎるというか、
肉体が近すぎるというか(笑)。
ところが、ルーベンスの肖像画を見ると印象がまるで違った。
自画像は静かで、
黒い服の中から顔と手だけが浮かび上がる。
《枢機卿服の聖ヒエロニムス》も素敵でした。
赤い帽子、白い髭、
老いた顔。
派手な演出はなく、
ただ一人の人間をじっと見ている感じがする。
「ああ、私はルーベンスが嫌いなんじゃなくて、
騒がしいルーベンスが苦手なんだ」とわかりました(笑)。
天使がいなければ、かなりまともです。
【④ ブリューゲルは、人間そのものを見ている】
最後に入ったブリューゲルの部屋が、
ものすごく面白かった。
バベルの塔はあまりにも有名。
それしか知らなかったんです
でも他にも素晴らしい作品がありました。
例えば《ベツレヘムの幼児虐殺》
遠くから見ると美しい雪景色。
でも近づくと、
兵士が家に入り、
子どもを奪い、
親が必死に抵抗している。
えっ?これって何何?
美しい風景の中で、
普通の暮らしが壊されている。
《謝肉祭と四旬節の戦い》では町中に人がびっしり。
食べる人、飲む人、祈る人、
商売する人、騒ぐ人、施しをする人。
一見ごちゃごちゃしているのに、
左は謝肉祭、
右は四旬節と、
きちんと世界が分かれているそうです。
そして《サウルの自殺》。
ものすごい軍勢と壮大な風景の中で、
肝心のサウル王は画面の端に、
ものすごく小さく描かれている。
王の死でさえ、
巨大な世界の中ではほんの一部分。
ブリューゲルは、
英雄を描くというより、
人間社会そのものを少し離れたところから眺めているように思う。
ヒエロニムス・ボスにも似ているけれど、
ボスがもっと夢や地獄の世界なら、
ブリューゲルは現実の人間の滑稽さや残酷さ。
美術館に入った時は、
「有名な絵を見よう」と思っていたのに、
結局私が一番面白かったのは、
絵の中の人間たちだった。
午前11時に入って 見終えたのは午後2時半。
さすがに疲れました。
でも、ものすごく楽しかった。
フェルメールは一枚だけだったけれど、
ブリューゲルはお腹いっぱい(笑)。
そして意外にも、
デューラーが結構好きだということにも気づいた。
こういう「自分の好みがわかる」のも、
美術館の面白さなのかもしれません。















