「満州から引き上げてきた戦後、南部一家は貧乏のどん底。父親と長男、妹を亡くし、病気の母の代わりに食糧を調達しなけらばならない次郎は必死で生きてきた。姉は仕送りのために何の仕事か告げずに出て行った。
母の葬儀後妹君子がわずかなお金のために売られそうになり、思わず人を殺してしまった次郎は10年の刑に服すことになった」
最初は、犯罪者とその兄妹の物語ということで東野圭吾さんの「手紙」のようなストーリーになるのかと思っていました。
途中、次郎が刑務所の中で焼物を覚え出所するところまではとても面白いのですが・・、段々違う方向に話が進んでいきました。
次郎が中国宋代の青磁汝窯に魅せられ、底のない深いところにはまっていくようになってからはちょっと退屈を感じるように。
焼物は好きですし興味もあるのですが、ちょっと専門的に偏りすぎだったような気もします。
そして次郎の極端な変貌ぶりは読んでいて辛い。あまりにも先が見えずで。
読後感もよくない、重いです。
でも、あれだけ苦労した君子はきっと幸せを掴めたのだろうということが救い。
南部次郎という人間の生き様を描いた大作だとは思うのですがとても重苦しい。
次郎だけの視点ではなく、君子に視点が移るために、その辛さは軽減されたりしますが、それでも一体彼の人生はなんだったんだろうと、どんよりした思いだけ残りました。
乃南さんの渾身の一冊なのだと思います。
