「火の粉」 「犯人に告ぐ」 「クローズド・ノート」 の雫井さんのデビュー作です。
これは一体いつ購入したのでしょう・・何年もずっとずっと積んであったのですが、北京五輪で柔道を見て感動したので柔道が中心のこの作品を読んでみたくなりました。
でも反対に、こちらを読んでからオリンピックを見たほうが楽しめたかもしれません。
「現役を引退して留学した後大学の研究助手をし女子柔道のコーチを務めている篠子。間もなくオリンピックの代表選手を選抜するという時期にドーピング疑惑が持ち上がった。
二人の選手のうちクロの方は選ばない。柔道界を揺るがす大事件を避けるため、内密に調査することを命じられた篠子は同じ大学で友人の深紅と彼女の同じ研究室にいる学生の絵津子、そして自分がコーチをしている柔道選手の詩織の協力を得て動き出すが・・」
柔道の知識はほとんどありません。
技に関しても名前は知ってるという程度なので、試合の描写を読んでいてもその体位など浮かばず・・
連盟だとか組織だとかどういう学閥だとか、ベースを知らないので登場人物と肩書と役割がどうにも結びつかなくて最初はひどく大変でした。
途中で見かける名前に「あれ?こんな人いたっけ?」ということもしばしば。
自分の知らない世界を描いた小説でも解るものはあるから、もしかしたらこれはデビュー作ということでまだ文章が粗いからなのかもしれないですが・・
調査はするものの、何となく平凡な感じで進むかと思ったら・・
「指定薬物じゃなければいいのか?」と問いかけられた辺りから俄然面白くなりました!!
なるほど~と思ったのは、最初の方での柔道はもう武道じゃない。という会話。
オリンピックで注目されてきてスポーツとして認識されてきている、でも元々は武術。
剣道をしている深紅は自分は武道をしているというプライドがある。その二人の言い合い、この辺りとても興味深かったです。
それと、身体を作るためには違法じゃない薬やプロテインなどの筋肉を増強させるもの、ほかにも色々な健康面でアスリートたちやその周りの人は気を使っている。
その禁止されているものと禁止されていないものの差は難しいですね~
全く何もしていない状態の人とある程度身体を作ることをしている人は純粋に同じ土俵で戦ってもいいものか。身体に負担がかかるものや副作用があるものだけが禁止薬物でいいのか。
自分には縁のない世界のことですが、色々と考えさせられました。
最近も相撲で薬物問題が問題になっていますね。とてもこのテーマタイムリーな感じでした。
ドーピング問題の黒幕、シンジの正体などは割とすぐに想像できてしまうのでラストでの衝撃はないですし、ちょっと最後が無理矢理すぎた感はあります。何故犯人があの部屋に被害者といつ必要があったのか?
色々甘い部分はありますが、たくさん絡み合ってきた問題全てをきちんと最後にほぐしていくのは巧かったと思います。
何と言っても、主人公の篠子よりも、終盤でパワーアップする深紅のキャラがとても生き生きしていて良かったです。
これがデビュー作とは、雫井さん最初から才能開花させていたんですね~!
