☆本プロからの移行☆
三十代後半。
「若い頃は・・」という言葉を吐くことに抵抗感がなくなり、おじさんと呼ばれる世代になり、自分の中で仕事や家庭において中途半端な年齢の男性達。
そんな人たちの、心暖まる短編集。
こういう年代の、疲れた感情をリアルに、そしてほんわかした温かさを描くのが本当に抜群に巧い作家さんです。
柔らかくなってしまったげんこつをにぎりしめ、改めて親子の関係を思う。「げんこつ」
親は子供を選ぶことは出来ない・・とふと思ってしまう。そんな息子と二人きりの数日間で自分の親のことを思う「はずれくじ」
娘の万引の品の中に知りたくなかったものがあった。娘が女になることに戸惑い葛藤する「パンドラ」
自慢の娘がイジメにあう転校生のせっちゃんの話しをするようになる。娘の痛みを感じることが出来なかった辛さとどうしてやるこも出来ないもどかしさの「せっちゃん」
最後の家族旅行になるかもしれない宿泊先に選んだのは二十歳の時に別の女性と来た「なぎさホテル」
いつも自分を抑えてきた棒がポキンと折れる。解っていた筈の一番大切な筈の家族との距離を感じる「かさぶたまぶた」
出て行った母を迎えようとしている老いた父の居る家に帰った。いままでなかた二人で過ごした時間に、何かが少しだけ変わる「母帰る」
自分の年代とも違うし、性別も抱えるものも違うけれど、それでもここに登場する主人公達の気持ちや迷いや痛みが、とてもリアルに伝わってくる。
作り物めいたドラマティックな話しではなく、日常の家庭の中での出来事が、切なくて痛くてたまらない。でも、ラスト明るい光に向かうのが爽やかな読後感で、どれもいいなぁ~と思えます。