やまなみ工房には様々なグループがあって、それは自発的に集まる人々のアートの発信地になっています。
そこには、ノルマも納期もありません。作品はただただみんなの中にある情熱が湧き出るときに産まれ、作業はそれぞれのペースで進んでいきます。ある作品は15分で完成され、ある作品は7年かかったり。利用者の中にはまったく作成することに関心のない方もいらっしゃいます。
その中に、酒井美穂子さんという方がいらっしゃって、彼女は朝起きてから眠りに落ちるまで片時もサッポロ一番しょうゆ味の袋を離すことはないそうです。サッポロ一番しょうゆ味のラーメンを食べるわけでもなく、ただただその袋を一日中カサカサさせているのです。
なぜ、サッポロ一番なのか。チャルメラではダメなのか。いろんな疑問がわきでてくるけれど、とにかく本当に私たちが行った時も酒井さんはずっとサッポロ一番しょうゆ味の袋をカサカサさせていらっしゃいました。
その光景を見たときになんだかとっても嬉しくて、心にグッときたのです。彼女が一心に袋をカサカサさせている姿を、スタッフの方はとても自然に接していて、みんなが彼女を好意的な気持ちで見ているのが伝わってきたとき、私も彼女が受けているメッセージを全身で感じ取ることができたからです。『あなたはそのままでいいんだよ。そんなあなたが大好きだよ』って私にも言われているような感じです。
(写真はやまなみ工房のFacebookページからお借りしました)
以下、山下さんからの引用です。
「7,000個の即席麺…」
酒井美穂子さんがやまなみ工房に入所したのは1997年の春。
出会った時には既に手にしていた即席麺「サッポロ一番しょうゆ味」。
美穂子さんは歩く時、食事中、時にはお風呂に入る時でさえ、どこに居ようと誰といようと深い眠りについた時以外、片時もサッポロ一番を離さない。
母の話によると17歳の頃、彼女にとって辛い出来事があった時期、台所にあったサッポロ一番をふと持ち始めた。
以来その即席麺は空腹を満たすためではなく、安心を与え、時に怒りの矛先となり彼女の心を受け止めた。
一年に約350袋。
「いつか自ら違う楽しみを見つけてほしい。そう願い寄り添って振り返れば20年…メーカーから感謝状が欲しいわ。」母の笑顔が眩しい。
「サッポロ一番しょうゆ味。」
無意識に形成された僕達の価値観や偏った常識に照らせばそれは食べるためだけのものかもしれない。
美穂子さんは自分を語らない。
でも僕達は彼女から大切な事を学ぶ。
「あなたはありのままのあなたでいいんだよ。」
「あなたの価値観に正直でいいんだよ。」と。
美穂子さんとやまなみで迎えた18回目のお正月。
美穂子さんが手にするサッポロ一番は、僕達みんなの宝物。
美穂子さんの素直な表現は僕達みんなの誇り。
ありのままの自分で存在できる安心と幸せを運んでくれる7,001個目のサッポロ一番。
彼女が彼女らしく安心して歩ける道を、今日も優しいスタッフと共に歩みたい。
2015年、やまなみ工房には8名の仲間が増え73名になる。
ゆとりあには1名の仲間が増え41名になる。
これからも一人一人が健康で自分らしく心豊かに笑顔で過ごせますように。
本年も皆様のご支援ご協力を賜りますよう心よりお願い申し上げます。
やまなみ工房/ゆとりあ
施設長 山下完和