今日のキスも、舌でくすぐり軽く追い掛ける位で我慢している。本当は、歯で噛み、舌で抑えつけて、征服してみたいけれど。君に対して私の“困った部分”の説明を、いつ、どんな形でしようか迷っている。

柔らかな脇腹もくすぐって、行為にも自分の考え事にも、一旦区切りをつける。君が笑いながら適当にテレビを点けると、映り出したのは催眠術を掛ける番組だった。

これは、話をする良いきっかけだ。

リモコンを持った君には“面白そうだから私は観たい”と、手を握れば充分。“自分は犬である”と暗示を掛けられた出演者の様子を、君はじっと興味深そうに観ている。

『これって本当だと思う?』

『ん…半分ぐらいは本当かもしれないね。』

出演者は気持ち良さそうに目を見開いたり、うっとり半目になったりしている。生き生きとした動きに、頬を高潮させて笑っている。だいぶ効いているようには見えたが、あくまで仕事だ。

『…どうしてこんな風になるのかしら?』

『それはね、相手に対する信頼と、自分の中にそう在りたいと思う気持ちが隠れているからだよ。』

撫でられている頭を傾げて、君はさらに説明を求める。これは、私の“困った部分”を受け入れられる器があるんじゃないか?と、君に期待している内容そのものなんだよ。

『術者は穏やかそうだし、身なりや顔つきはきちんとしているよ。でも妖しさもあって。安心できるけど、どこか不安な気分になりそうだね。』

自分の他に、こういう技を使う人間がもし近くに居たら、正直関わらせたくない。君は愛情と体温に飢えていて。警戒よりも好奇心が強いから。

『この出演者は職業柄ストレスが多いはず。本心では、全て投げ出して本能のままに過ごしたいのかもしれない。基本的には素直だろうね。』

心理的効果に沿った仕組みが作れるのなら、自分である必要は無いのでは。と心が押し潰されそうになる。そんなものが無くても、君は側に居てくれるか?

『君はすごく掛かりやすそうだよ。試してみようか。』