■建前と本音の区別がわからぬまま大人になった者は、ちょっとした挫折でも精神的に参ってしまう。心を病む人の中にはこのような人が数多く含まれている


【リア王の場合】

老いたリア王は国を三分して三人の娘たちに譲ることを決心し、その伝達式に娘たちを呼んで、誰が一番彼を愛するかを尋ねた。

リア王は末娘コーディリアは勘当し、後事を二人の娘に託したが、後に父を裏切り死にいたらしめるのである。


なぜ末娘は父を怒らせたか?

姉二人は、誰よりも父を愛するなどと、いろいろ言葉を尽くしたのに対し、コーディリアは何も言うことはないと口を閉ざした。

驚いた父に催促されたコーディリアは次のように述べた。

「自分の父に対する愛は、子として当然の愛で、それ以上でもそれ以下でもありません。

姉さんたちは愛すべき夫を持ちながら、誰よりも父を愛するなどと言いますが、私ならそういう結婚はしません」

コーディリアは姉二人を強く意識し、父の求めに応じるよりも、姉を批判することに終始したのである。


■姉二人はその場にふさわしい建前を言ったのに対して、コーディリアは本音だけを言った。そのため彼女は父の意に背くことになった。


もしコーディリアが父を喜ばす建前を言えばそれですんだはず。。

しかし彼女はあまりにも姉たちを意識しすぎていた。。


■リア王も、なぜコーディリアの本音が見抜けなかったのか?(ということは姉二人の本音をも見抜くことはできなかったということだが)

これは彼が言葉の裏にある心を読むことができなかったからだ。

彼は建前と本音の区別がわからなかったのである。

これは老いのため少しボケていたということもあるかもしれないが、それよりも長年王位にあって、自分の命令に人々が従うことに馴れきっていたので、人間に表と裏があることを学ばずに来たからだ。

そしてリアは退位後、言語に絶するほどの苦しみを通してそのことを学ばねばならなかったのである。

彼は狂乱状態に陥るが、その中で真実を見ることができるようになる。

しかし

リア王にもともと建前と本音、表と裏という分別があったのなら、こうはならなかったはず。。


【私たちも老後施設には行きたくないのなら、、子どもたちと共存せねばならず、そのためにお互いに建前と本音を見分け、わきまえていかなければならない、、、】