ほとんど1週間近く遅れたけれど、
やっぱり書いておきたいと思う。
松本白鸚さん主演のミュージカル『ラ・マンチャの男』が
4月24日に大千穐楽を迎えた。
1969年の日本初演以来、単独で主演を続けて半世紀超え、
という奇跡のような舞台だ。
映像提供:東宝演劇部
大千穐楽の会場となった横須賀芸術劇場は満員御礼。
白鷗さん、初日よりずっと声に艶と伸びがある。
開幕してからの積み重ねと、最後の舞台への気力か。
役者って、本当にすごい人種だと改めて驚いた。
主人公が名ナンバー「見果てぬ夢」を歌うあたりから
鼻をすする音が客席のあちこちから漏れてき始めた。
いや、他人のことを言ってる場合じゃないのだけれど。
名ナンバーと物語に、心を揺さぶられてしまうのだ。
そのうえで、物語のドン・キホーテと白鸚さんが重なってしまう。
「見果てぬ夢」を追って歩き続けた俳優魂。
その魂を突き動かしてきた作品の素晴らしさ。
キホーテの想いを引き継ぐアルドンザ役を
松たか子が演じているもので、
物語世界と現実世界まで二重写しになってしまうし。
カーテコールになる直前から客席は総立ち。
舞台に出演者全員が揃うと、大千穐楽を寿ぐ幕が下りてきて
白鸚さんの挨拶。
「26歳から54年、皆様のおかげで今日までやってこられました。
…これからも命ある限り芝居をやっていきます」といった内容だ。
「最後に『見果てぬ夢』をみんなで歌いましょう」ということで、
舞台上のカンパニーと客席の合唱になる。
歌っている観客もいたし、私も一瞬歌いかけたけれど、
舞台からの歌声が聞きたくて、黙ってウルウルしてしまった。
拍手が鳴りやまず、再び舞台に戻ってきた
白鸚=キホーテ=キハーナ=セルバンテスは、
サンチョ(駒田一)をお供にカミテへと去って行った。
これが、本当に終わり。
映像提供:東宝演劇部
まだまだ拍手は鳴りやまなかったけれど、二度と姿を現さず。
それが、ものすごい余韻を生む。
あの二人は、どこかで旅を続けているような、そんな感じ。
素晴らしい大千穐楽だった。