後味、さわやか。

『ミセス・ハリス、パリへ行く』は

とても気持ちのいい映画だ。

このご時勢でギスギスしがちな心を

優しい幸せ感でうるおしてくれること、請け合いだ。

 

 物語の背景は、第二次世界大戦後のロンドン。

ミセス・ハリス(レスリー・マンヴィル)は家政婦。

夫は戦争から戻ってこないままだ。

ある日、仕事先の家でクリスチャン・ディオールの

ドレスを見て、一目ぼれしてしまう。

 

ⓒ 2022 FOCUS FEATURES LLC.

 

 値段を聞けば500ポンドもするという。

しがない家政婦には夢のまた夢のドレスだ。

けれど、ミセス・ハリスは諦めない。

あの手この手でお金を稼ぎ、またかき集め、

ついに500ポンドを手に、パリに出かける。

 

 いきなり訪れたディオールのメゾンでは、

当然ながら門前払いされたけれど、

ひょんなことからショーを見ることはできた。

 

 彼女の温かさポジティヴさは、

偶然知り合った侯爵(ランベール・ウィルソン)や

メゾンの会計士(リュカ・ブラヴォー)、、

モデルのナターシャ(アルバ・バチスタ)などを

次々に味方につけていくのだった。

 

 さて、ミセス・ハリスは無事にディオールのドレスを

オーダーできるのだろうか…(って、もうお分かりでしょうが)

 

ⓒ 2022 FOCUS FEATURES LLC.

 

 思い込んだらわき目もふらず進んでいくヒロインの姿に、

すごく元気をもらえる。

それも、強引とかじゃ、決してなく、

どこかのんびり、ふんわりしているところが、ほんっと素敵。

温かいだけでなく、骨惜しみしないところも、いいなあ。

 

 見ながら、とても幸せな気分に包まれる映画。

主演レスリー・マンヴィルがかわいいし、

アルバ・バチスタがとびきり美しいし。

そうそう、彼女を巡るサブ・ストーリーも、とても素敵。

また、イザベル・ユペールが意外な役を演じていたり、

キャストの見どころも多い。

 

 ストーリーはもちろんのこと、

個人的にさらに楽しめたのが、ディオールのドレス群。

 

 以下は、デォオールがらみの話になるので、

ファッションに興味のない人は、スルーを。

映画は、ちょっぴりご都合主義なところも、全部ひっくるめて

幸せ~な作品だ、ということだけは、言っておきたい。

 

 さてさて、実は私、ディオールには、ちとウルサイ。

もしか、どのドレスでもいい、1着だけ手に入るとしたら、

1947年のディオールの花冠ドレス(コロール・ラインとも言う)を

迷わず選ぶ、というくらい。

 

ⓒ 2022 FOCUS FEATURES LLC.

 

 クリスチャン・ディオールは、1947年に発表した

この花冠ラインで、ファッション界のトップに踊り出たデザイナー。

メゾン設立後1年程度のばりばり若手で、

このラインは「ニュー・ルック」と呼ばれて旋風を巻き起こした。

ミセス・ハリスが一目ぼれしたドレスも、このラインだ。

 

 当時の500ポンドは円換算すれば(1ポンド=1000円)で、

50万円と言う計算だけれど、物価換算というか感覚的には

500万円くらいかなあ…と、ついつい計算してしまったのは、

ビンボー人のさがかしらん・・・。

 

 それはそれとして、ディオールの麗しいファッションが

続々と出てくるのが、もう目の保養ったら。

ディオールのシグニチャーのひとつ、バー・ジャケットとか、

さらっと出てきて、あ~、もっとじっくり見せて―!と心で叫んでしまう。

 

 だいぶ横道にそれてしまったけれど、

隅々まで楽しめる、ということなのです。

 

公開中

配給 パルコ ユニバーサル映画  

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