もう一度見たいものだと思いつつ果たせなかった

ミュージカル『ヘアスプレー』東京公演。

仕方ないですよねー。

前売り即完のうえ初日も延びて、公演回数減っちゃったし。

 

 で、、余韻を噛み締めているうちに原作映画のことに

思いは漂っていったのだった。

ご存じ、ミュージカル『ヘアスプレー』は2007年に映画化もされた

ブロードウェイのヒット・ミュージカル。

ブロードウェイ初演は2002年だけど、

そのミュージカルの原作になったのが

ジョン・ウォーターズ監督の同名映画(1988年)だった。

 

 大元の原作映画は、すっごく楽しいけど、

けっこう毒もあったりする。

舞台ミュージカル日本上演版では山口祐一郎が演じている

主人公トレイシーの母親エドナは、

ウォーターズ監督の”ミューズ”ディヴァイン。

巨漢と言っていいドラァグクイーンで、

なんでも監督の高校以来の友人なんだとか。

で、トレイシーのドレスがゴキブリ柄だったり、

あちこちにこの監督らしいドクとおふざけが仕込まれている。

それでも『ヘアスプレー』はメジャー製作作品だから、まだおとなしい方。

 

 ジョン・ウォーターズ監督本来の持ち味といえば、

悪趣味とかバッド・テイストとか称されるもの。

でも、それがすごく可笑しかったり、楽しかったりするので、

カルト的人気を誇っているわけなのだけど。

 

 私自身、『ピンク・フラミンゴ』(1972)を見た時はのけぞった。

ディヴァインの艶(あで)やかな、というかけばけばしい姿にも、

意表を突かれるそのストーリー展開にも、

ゲゲッと思いながら、最後は目が離せなくなってしまったのだった。

 

 一番インパクトの強かった映画は『ポリエステル』(1981)だ。

「オドラマ」と銘打ったもので、つまりは匂い付き映画。

観客は、匂いシートを渡されて、そこにある番号を

スクリーンの指示に従ってこする、というものだ。

 

 薔薇の花がアップになったシーンで、指定番号をこすると

薔薇の良い香りが立ち上る、というしかけ。

でもね、とんでもない匂いのものもあるわけです。

ちょっと書くのをはばかられるような・・・。

匂いシートをこすると、その匂い、というか、臭い(この字の方がぴったり)が

立ち上ってくる。

 

 確か、新宿のミラノ座で見たと思うのだけれど、

館内はいろんな香りと匂いと臭いが入り混じって、

とんでもない悪臭空間と化してしまったのだった。

もう、ほんと悪趣味。でも、バカバカしすぎて大笑いできる。

そんな作風の監督がジョン・ウォーターズだ。

 

 そういえば、いまは社会性もある愉しいミュージカル・コメディになった

『ヘアスプレー』も、1988年の製作当時はけっこう尖っていたのだな、

と、改めて思う。公民権が成立しても人種差別はまだ激しかったし、

ドラェグクイーンもゲイも白眼視されていた時代。

その尖りっぷりがウォーアーズ監督の魅力だ。

 

 ミュージカル版『ヘアスプレー』も、もちろん

楽しい笑いの中に、ちゃんと風刺も皮肉も織り込まれている。

だからドラマがいっそう楽しい。

マーク・シェイマンの楽曲の魅力はいわずもがな。

 

 なんだかヘンな話になっちゃった。