やっと見られた!

8月15日から上演していた『シュレック・ザ・ミュージカル』

トライアウト公演のことだ。

もっと早い時期に見る予定が、急遽休演にぶつかってしまったのだった。

 

 spiの休演で、タイトルロールのシュレックを演じるのは

鎌田誠樹。本来はオオカミ役だった人だ。

で、オオカミ役は「3匹のこぶた」長男役だった岩﨑巧馬。

2日間の稽古で本番に挑んだと聞いたけれど、

とてもそうは思えないうまさ、ハマリっぷりだ。

 

 

撮影:阿部章仁

 

 舞台は予想のはるか上をいく楽しさだった。

本当のところ、こんないい作品だとは思わなかった。

 

 実は、この作品自体は2008年のブロードウェイ初演版を見ている。

2001年にドリームワークスが製作した同名映画のミュージカル化である。

劇場には家族連れも多く、とてもにぎやかで愉快な作品だと、

その程度の印象しかなかったのだった。

もちろん、ダイヴァーシティ〈多様性)という主題は伝わったけれども。

 

 ところが、この舞台は、楽曲の素晴らしさが前に出た感。

楽曲が、キャラクターもドラマもくっきり象っている。

カンパニー全体の歌唱レベルが高いのもあるだろう、

ジニーン・テソーリの楽曲の良さが際立っている。

テソーリはミュージカル『ファン・ホーム』や『VIOLET』などの

作曲家。といえば分かるかも。

 

 ここで、一応、ストーリーをざっと。

人里離れた沼のほとりに住む緑色の怪物シュレックのもとに

ある日おとぎ話の主人公たちが押しかけて来た。

領主ファークアード卿に追放されたのだ。

静かな暮らしを取り戻すべく卿にかけあったシュレックは、

追放令を取り消す代わり、ドラゴンと闘って囚われのフィオナ姫を

取り戻す冒険に出るはめに…。

 

撮影:阿部章仁

 

 フィオナを演じる福田えりがうまい。

美しい高音からドスの効いた低音まで自在で、

演技もまた緩急自在。これまでで一番のハマリ役かも。

シュレック役の鎌田誠樹も、代役とは思えない完成度。

思えば彼、かつて『レ・ミゼラブル』のジャベール役も

急な代役で演じきったことがあったのだったなあ…。

 

 ドンキー役の吉田純也が歌も演技も軽やかだし、

ファークアードを演じる泉見洋平が、あんなに面白いなんて。

一人ひとり挙げていくたくなってしまうくらい、いいカンパニーだ。

 

 なんだかんだで、端々まですっかり堪能してしまった♪

 今回の「トライアウト公演」は、

ブロードウェイ上演版の凝縮ヴァージョン。

すっきりまとめて、小さな子供にも分かりやすい。

でも、おとなにとっても見応えがある。

それは楽曲の良さが生きているから。

 

「いずれはフルヴァージョンで上演したい」とは

プロデューサー氏の言。

それも、また待ち遠しい。

 

8月28日(日)まで、東京建物Brillia HALL