カーテンコールの拍手が鳴りやまない。

早々のスタンディング・オベーションの後も、

心の底からの拍手がいつまでも響く。

ミュージカル『ノートルダムの鐘』@KAATでの一夜だ。

 

 ミュージカル『ノートルダムの鐘』の日本初演は、

2016年。劇団四季によるもので、四季劇場[秋]での上演だった。

2018年には、今回と同じKAAT(神奈川芸術劇場)で再演、

首都圏での上演は、これが3回目になる。

 

鐘を突くカジモド ⒸDisney

 

 初演のときは、そりゃあ、感動した。

衝撃的でもあった。涙が止まらなかった。

ところが、今回、なんだか初演より良くなってない?

とさえ感じるほど、しみじみと胸にしみたのだった。

 高さのある劇場サイズが作品に合ってる、ということもあるけれど、

それは再演版でも同じ。

初演、再演、三演と、3度目の観劇ともなれば、

こちらのアタマに作品がしっかり入っている、という面は

もちろん、すごく大きい。

 

 加えて、ものすごーく陳腐な言い方だけれど、

「こなれた」感が出てきたような。

きっちりと瑕疵なく築き上げられた作品が、

どことなくまろやかな熟成を見みせたというか。

舞台に、いい感じの柔らかさと温度があるのだ。

 

岡村美南のエスメラルダ ⒸDisney、撮影:阿部章仁

 

 キャストも良かった。

主演の寺元健一郎は、初演『ノートルダムの鐘』で

四季デビューし、今回初のカジモド役。

エスメラルダ役は岡村美南。

いろんな作品でヒロインや準ヒロインを演じているし、

初演エスメラルダでもある。

見るたびに女優としての大きさを増し、今回は特に余裕さえ感じる、

 

 フロローは野中万寿夫。

これが、すごくいい。弱さが見える人間くさいキャラ。

フィーバスは、初役の神永東吾。

タッパがあって見栄えのする、爽やかキャラ。

他にもコーラスに至るまで充実していて、

おそらくカンパニー全体のレベルが上がっているのだと思う。

(5月31日18:30の回を観劇)

 

左端左:カジモド=寺元健一郎、右端:フロロー=野中万寿夫

ⒸDisney、撮影:野田正明

 

 一応、物語をざっと。

15世紀末のパリ。

ノートルダム大聖堂の鐘つきカジモドは

ロマの娘エスメラルダに恋をする、

カジモドを育て支配する司教フロローも、

さらに新任の警備隊長フィーバスも

エスメラルダに魅了される。

 

 と書くと、四角関係のお話、と思われれそうだけれど、

それ以上に、4人が4様に自分に向き合っていくドラマ。

容貌や身分、社会的立場を超えて、

人は、ひとしなみに個々の人間である、と

明快に見せる演出も鮮やかだ。

どう鮮やかかかは、是非自分の目で確かめてほしい。

 

 このミュージカルの原作は、ディズニーの同名アニメーション。

楽曲も、アニメーション版と同じく

アランメンケン(作曲)×スティーブン・シュワルツ(作詞)が手がけ、

舞台ミュージカル版ではさらに多くの新曲も加わっている。

 

 さらに、アニメーションのもともとはヴィクトル・ユゴーの小説。

そう、あの『レ・ミゼラブル』と同じフランスの文豪。

だからか、2作には通底するものがある。

しいたげられる者へのまなざしとか、権威への批判とか。

 

 この作品、劇団四季は大事に上演を続けていってほしいもの。

中学生とか、高校生とかに見せたいなあと思ってしまう。

大人はもちろん、だけれども、ね。

 

8月7日(日)まで、KAAT 神奈川芸術劇場〈ホール〉