第94回アカデミー賞で作品賞を受賞したのが

『コーダ あいのうた』。

これは、うれしい驚きだった。

当初はダークホース扱いで、授賞式が近付くにつて

本命視されるようになってきた作品だ。

 

 作品賞とともに、監督・脚本を手がけた

シアン・ヘダーが脚色賞を、

ヒロインの父親を演じたトロイ・コッツァーが

助演男優賞に輝いた。

 

手話で受賞スピーチをするトロイ・コッツァー

 

トロイ・コッツァーは、ろう者男優で初めてオスカー受賞。

ちなみに、ろう者の女優ではマーリー・マトリンが

『愛は静けさのなかに』(1986)で初のオスカー受賞者となった。

マールー・マトリンは、この『コーダ あいのうた』でも

ヒロインの母親を演じている。

 

 映画は、優しさと爽やかさに満ちた素晴らしい作品。

フランス映画『エール!』のリメイクである。

原作では農場だったヒロインの家を、

ここでは漁業従事者に変えただけでなく、

家族の絆やそれぞれの勇気とヴァイタリティを

より濃く描き込んで、いっそう見応えのある作品に仕上げてもいる。

 

監督・脚本のシアン・ヘダーは脚色賞を受賞

 

 ストーリーは、ざっと、こんな。

米国の漁港に暮らす高校生ルビー(エミリア・ジョーンズ)は、

両親(トロイ・コッツァー、マーリー・マトリン)と兄(ダニエル・デュラント)の4人家族。

ろう者の家族の中でただ一人耳が聞こえる彼女は、

家業の漁業から日常生活に至るまで家族の通訳をしている。

 

 高校で憧れのマイルズ(フェンディア・ウォルシュ)と

同じ合唱部に入ったルビーは、

指導教師に歌の才能を見出され名門音楽学校への進学を勧められる。

けれど、歌声を聞けない両親は彼女の才能を信じられない。

ルビーなしでは家業にも生活にも支障が出てしまう。

あれこれの条件が重なり、ルビー自身も進路を迷い始めるが…。

 

 デヴィッド・ボウイの「スターマン」はじめ

多彩で魅力的な音楽が織り込まれる。

なかでも、ジョニ・ミッチェルのヒット曲「青春の光と影」は、

印象的で、感動を倍加する。

 

 タイトルの「コーダ」=「CODA」は

音楽用語(楽曲の区切りを表わす)と同時に

「Children of Deaf Adults」(ろう者の子供たち)。

トロイ・コッツァーの受賞スピーチでも触れていた。

 

ただいま上映中。

GAGA配給。

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