増田貴久主演のミュージカル『HOW TO SUCCEED』

(ハウ・トゥー・サクシード)が早くも再演された。

増田主演版は1年ちょっと前に初演されたのだけれど、

その時はコロナ禍のあおりで、東京では客席が半数に制限されていた。

でも、今回はフルで入っている。

東急シアターオーブが3階席まで満杯。いい景色だ。

 

 一応、ストーリーを。

背景は1960年代のアメリカ。

窓拭きの青年フィンチ(増田貴久)が、

ハウトゥ本に従って行動し、

大企業で出世していく物語だ。

もう、すごく能天気なおとぎ話なんだけど、

おおらかで、ひたすら陽気で、スカッとするお話。

 

 それに、なんたって楽曲が素敵。

楽曲(フランク・レッサー作詞・作曲)は、作品を離れて有名だけれど、

全く知らない人でも帰りに口ずさめるくらいノリがいい。

 

【撮影:田中亜紀】

 

 舞台、初演からもすごく良くなってる。

初演も楽しかったんだけど、比べても数倍楽しい。

テンポがとてもよくて、一気に見せてしまうのだ。

キャラクターも、中身が濃くなった感じ。

 

 初演の時はコロナ禍で演出家(も振付家が来日できず

リモートでやったのが、今回は

演出家(クリス・ベイリー)も振付家(ベス・クランドール)も

来日できてナマで演出できた。

これ、やっぱり大きい。

 

ミュージカル-・コメディって、ほんの半呼吸の間合いの差が

笑いを誘えるかどうかの大きな差になってしまうもの。

そのへんの間合いがきゅっと締まって、面白さ倍増なのだ。

 

 この舞台、ものすごくダンスが多くて、その振付がカッコいい。

カッコいいけど踊る方は大変ってやつ。

上手なダンサーを揃えたカンパニーで、どのダンス・シーンもワクワク。

そのなかで、さらにたくさん踊っているのが主演・増田。

1幕のビッグ・ナンバーで、もうショー・ストップになる。

 

 歌い踊り終わった増田フィンチが、肩で息しているところに

拍手が鳴りやまず、ほとんど1分くらいそのまま状態。

「すごーい!」の拍手がしばらく続き、

今度は「頑張れ~」の拍手がどんどん広がる、そんな感じ。

もともとダンスがうまい人だけど、ここでますます磨かれた印象もある。

 

 2幕フィナーレのビッグ・ナンバーでも、同じ現象が。

この時は、社長役の石川禅も一緒。

石川禅、ナンバーの途中からダンスに加わるとはいえ、

これまでの歌中心キャリアとか年齢とか考えると、すごい。

 

【撮影:田中亜紀】

 

 フィンチのライバル、社長の甥っ子バド役を演じる

松下優也が、やっぱり初演よりうまくなってる。

この役、イヤミだけどお間抜けというキャラ。

それを、もう思い切り振り切って演じている。

こんなにデキる俳優なんだぁ、とも思う。

 

 フィンチの恋人ローズマリー役が唯月ふうか。

軽やかで、ミュージカル・コメディがよく似合う。

『ピーターパン』のあとは、なぜか幸薄かったり

悲しい役が多かったけど、もっとコメディやってほしいな。

 

 出演者は他に、

社長秘書ミス・ジョーンズに春野寿美礼、

社長の愛人ヘディに雛形あきこ、

フィンチの上司に黒須洋嗣、

ローズマリーの友人スミティに林愛夏、

ブラザー・トムが二役で、といった陣容。

 

12月7日(火)まで東急シアターオーブ

12月14日(火)~12月16日(木) オリックス劇場