びっくり。

『魍魎の匣』がミュージカルになった。

京極夏彦の、あの分厚い小説は、

映画化やTVアニメ化もされているから、知っている人も多いと思う。

幻想味が横溢の、複雑怪奇なミステリーだ。

あれをミュージカル化するなんて、相当大変そうとも思うはず。

 

 で、見て、びっくり。今度は、うれしい驚き。

すごくうまくできている。ぐいぐい引き込むのだ。

板垣恭一の脚本と演出、ほんと手際がいい。

 

撮影:岩田えり

 

 まずは物語から。背景は1952年、昭和27年。

鉄道事故で女子学生(徳岡明)が瀕死の重傷を負う。

一緒にいた親友の女子学生(熊谷彩春)の証言で、

殺人未遂の線が浮かび上がる。

一方では、バラバラ殺人事件の被害者が立て続けに発見される。

 

別件に見えた事件に関連性が見え始め、

古本屋店主にして拝み屋の中禅寺秋彦(小西遼生)が、

探偵の榎木津礼二郎(北村諒)、

作家の関口巽(神澤直也)らと事件解決に乗り出す。

 

撮影:岩田えり

 

 登場人物は多いし、背景も時制もあちこちに飛びまくり。

膨大な情報を撒きながら、

ドラマはすごいスピードで進んでいく。

でも、観客が置き去りにされることはない。

 

 それを可能にしたのは、ホリゾントに映し出される文字。

次々に浮かぶのは、台詞や歌詞ののキーワードだ。

ドラマに織り込まれた情報量はものすごいのだけれど、

キーワードが耳と目から入ってくるので、

ちゃんとアタマに残る、というわけ。

 

 もちろん、ミュージカルならではの手法も駆使。

ミュージカル・ナンバーが異なる世界と時間を繋ぎ、

コロスの歌が状況を語り、物語を回していく。

この楽曲(小澤時史の作曲、音楽監督)がいいのだよね。

 

撮影:岩田えり

 

 主演の小西遼生が、似合っているのなんの。

姿が良くて歌がうまいのは言うまでもないけれど、

ファンタジーに役にハマる資質があるのだろう。

ミュージカル『ポーの一族』でも、似合っていたなあ。

北村諒も神澤直也も、アニメから抜け出たみたいに似合う。

 

 事件を追う刑事・木場修太郎役は吉田雄。

中禅寺らの手足となって情報収集する編集者・鳥口役は大川永。

原作では男性だけれど、ここでは女性。

おかげで、劇中に柔らかく軽やかな風が吹く感じ。

この二人を筆頭に、ミュージカル・カンパニー「イッツフォーリーズ」の

メンバーがしっかりとドラマを支える。

そういえば、「イッツフォーリーズ」のOB格といえる

駒田一も出演、印象的な演技を見せている。

 

ASPイッツフォーリーズ公演

11月10日(水)~11月15日(月)、東京・オルタナティブシアター