ホットでクールなミュージカル映画、それが『イン・ザ・ハイツ』だ。
ラテンのリズムとラップが融合し、
ヒップホップも取り込んだダンス・シーンでも魅了するミュージカルだ。
もとは、2008年にブロードウェイで初演された同名ミュージカル。
原案・作詞・作曲は、いまやブロードウェイ・ミュージカルを牽引する
リン=マニュエル・ミランダ。初演の舞台では主演もしている。
©2021 Warner Bros.Entertainment Inc.All right Reserved
物語の背景は、ニューヨーク・マンハッタンの北西部地区ワシントン・ハイツ。
ラテン系移民が多く住むこの町には、いつも音楽とダンスがあふれている。
ここで小さな食品雑貨店を営むウスナビ(アンソニー・ラモス)。
彼の育ての親で、近所のみんなに慕われている
アブエラ(オルガ・メレディス)は、ウスナビの店で毎週宝くじを買っている。
近所にはダニエラ(ダフネ・ルービン=ヴェガ)が経営する
ヘアサロンがあり、そこで働くヴァネッサ(メリッサ・バレラ)に、
ウスナビは密かに恋をしている。
夏のある日、名門大学に進んだニーナ(レスリー・グレース)が
町に戻って来た。彼女は、この町の希望の星だ。
彼女に恋していた幼なじみのベニー(コーリー・ホーキンス)は再会を喜ぶ。
けれど、ニーナには秘密があった。
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ウスナビ、ダニエラ、ニーナ、ベニーら、それぞれが
自分の夢を求めてもがき、あるいは諦めようくとする日、
町を大停電が見舞う。
町の人々が心と力を合わせアクシンデントを乗り越えていくなか、
ウスナビたちもまたそれそれの夢に向かって大きな一歩を踏み出していく。
物語の大筋は舞台版をなぞってはいるのだけれど、
かなりディテールは異なるし、主要人物のキャラクターも深くなっている。
もちろん、ラテン・コミュニティの絆や、それぞれが夢や希望を
叶えるべく前進するといった、芯のところは同じだけど。
映画版の特徴は、目がくらむようなスケール・アップと
ドラマ自体のアップデートにある。
ストリートの遥か彼方まで埋め尽くすダンス・シーン、
また、重力から解放されたロマンティックなダンスなど、
映像ならではの見せ場がいっぱい。
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一方では、時代に合わせたアップデートも目立つ。
端的に言えば、トランプ以前とトランプ後の差異。
ブロードウェイ初演時の大統領はブッシュJr.
その後の大統領がオバマである。
だから、たぶん作者のリン=マニュエルは
アメリカという国のキャパシティに希望を持っていたのだと思う。
でも、この映画製作中はトランプ政権下。
経済格差と人種の分断が激しくなってアメリカに、
リン=マニュエルはナイーブな希望など持てなくなったのではないか、と。
舞台版ではポイントになる7月4日の独立記念日も、
映画版では、ただの夏の日になっているし。
だから、映画版では、ドラマ自体が「昔、むかし…」という語り出しで
半ばファンタジー化されている。
もちろん「ワシントン・ハイツ」自体の地価が暴騰して
いまやラテン系移民の住める町ではなくなったという点でも、
「昔、むかし」なんだけど。
というわけで、映画版では、夢を叶えるためには自ら動き
闘わねば、というメッセージも濃くなっている。
舞台版にはなかったアグレッシブな行動も織り込まれているのだ。
などなど、舞台版との差異も面白いけれど、
なにより、あの弾むような映像を映画館の大スクリーンで見る、
監督はジョン・M・チュウ。
配給:ワーナー・ブラザーズ映画
7月30日(金)から全国ロードショー