いかにもブロードウェイ・ミュージカルらしい

楽しいミュージカル・コメディ。

笑いのなかに、LGBTQといった社会的な題材も織り込み、

多様性や許容というテーマが爽やかに浮かび上がる。

 

『the PROM』は、そんな素敵な作品だ。

2018年のブロードウェイ初演作の日本上演。

「地球ゴージャス」が初めて手がける

ブロードウェイ・ミュージカルでもある。

 

【撮影:引地信彦、NAITO】

 

 タイトルのプロムは、学年最後のダンス・パーティのこと。

そう、ハリウッド映画やアメリカのTVドラマでも、おなじみのあれだ。

 

 インディアナ州の高校生エマ(葵わかな)は、プロムに

同性の恋人アリッサ(三吉彩花)と参加しようとする。

ところが、それを受け入れないPTAは、プロムを中止にし、

そのためエマはいじめを受けていた。

 

 一方、ブロードウェイのスター、バリー(岸谷五朗)と

D.D.アレン(大黒摩季、草刈民代、保坂知寿のトリプル・キャスト)は

出演した新作ミュージカルが開幕早々コケてしまって、呆然。

そんなときWebでエマのトラブルを知り、彼女を助けに行くことにする。

 

【撮影:引地信彦、NAITO】

 

 もちろん、自分たちの話題作りのためだ。

売れない俳優トレント(寺脇康文)と

『シカゴ』で20年もアンサンブルをしているアンジー(霧矢大夢)、

さらにD.D.アレンのエージェント、シェルドン(小浦一優)も

同行し、インディアナの町に乗り込んだ。

 

 そして起きる大騒動…。

 

 エマ役の葵わかなが、まっすぐでチャーミング。

D.D.アレン役は保坂知寿でしか見ていないのだけど、

さすがハンパないベテラン女優感で、思い切りよく笑わせてくれる。

 

【撮影:引地信彦、NAITO】

 

 見ものは、ゲイのバリーを演じる岸谷五朗。

演技もかわいいんだけど、まあ、踊る!踊る!

岸谷五朗って、こんなに踊れるんだっけ?!と、驚いてしまった。

日本版脚本・訳詞・演出も手がけて八面六臂の大活躍だ。

 

 踊る、と言えば、霧矢大夢も。

『シカゴ』出演歴が長い女優という役にふさわしく、

派手でアクロバテイックなダンスをきれいに決めて見せる。

エリートなのに舞台では売れてなくて、でもTVシリーズ出演で

ちょっとは顔を知られているトレント役を、

ビミョーな自意識をうまく出す寺脇康文も、楽しいし。

 

 ちなみに、このミュージカル、Netflixで映画化もされている。

映像版もいいけれど、やっぱりナマの躍動感は格別だ。

 

企画・製作:株式会社アミューズ

 

4月13日(火)まで、東京・TBS赤坂ACTシアター

5月9日(日)~16日(日)、大阪・フェスティバルホール