ミュージカル『The Illusionist-イリュージニスト』が、

ついに初日の幕を上げた。

開幕まで、本当に、紆余曲折の、長い道のりだっただけに、

感慨もひとしおだ。

 

アイゼンハイム役の海宝直人

撮影*岡千里

 

 今回は、当初予定の演出プランではなく、

コンサート・ヴァージョンでの上演。

でも、衣装は着けているし、動きも入っているし、

ダンスも少ないながら、ちゃんとある。

だから、かなり完全版も想像できてしまう。

 

 オープニングは、興行師ジーガ(濱田めぐみ)のナンバー。

イリュージョニストのアイゼハイム(海宝直人)と

世界中を巡演しているのだ。

いまはウィーン公演中。時は19世紀末。

 

ジーガ役の濱田めぐみ

撮影:岡千里

 

 そこで、アイゼンハイムは

公爵令嬢ソフィ(愛希れいか)と再会する。

二人は幼い頃に恋心を抱き合った仲。

けれど、ソフィには皇太子レオポルド(成河)という

婚約者がいた・・・。

 

 というストーリーは、映画『幻影師アイゼンハイム』を

見た人なら、もう知っているはず。

ミュージカル版は、映画の原作となった小説を

ピーター・ドューシャンが脚本化。

マイケル・ブルースの作詞・作曲、

トム・サザーランドの演出によるもの。

米国と英国のスタッフと日本の俳優による

ワールド・プレミアである。

 

左はソフィ役の愛希れいか

撮影:岡千里

 

 楽曲は、時代背景とドラマ世界を映して

総体的に壮麗。

いやあ、一度じゃカケラも覚えられなかった。

で、いうまでもないけど、全員うまい。

歌だけでこれだけ世界を作れてしまうのだから、

演出プラン通りに実現できたら、とワクワクする。

 

皇太子レオポルド役の成河

撮影:岡千里

 

 カーテンコールでは、主演の海宝くん、

感極まっていた。

客席も同じ思い。

みんなで感動を共有する、劇場ならではの醍醐味。

カーテンコールには、作詞・作曲の

マイケル・ブルースも登場、

カンパニーを称えたあとで、

「この舞台を、三浦春馬さんにも捧げます」と

言ったときには、もう胸にぐぐっときてしまった。

 

衣装から照明までばっちり

撮影:岡千里

 

 そう、この作品、本来は12月に開幕して

年またぎの公演のはずだった。

数年前から時間をかけて製作にかかっていたのだった。

でも、コロナ禍で海外との行き来もままならず、

三浦春馬さんの逝去、キャスト交替と、

本当にいろんなことがあった。

 

 困難を乗り越えて、ようやく開幕できたのだ。

初日、中日、ラク日と、わずか3日の公演だけど、

上演できて本当に良かった。

その場に居合わせることができた幸運を思う。

 

パーフェクト・ヴァージョンまで、また長い道のりだけど、

その日を楽しみに待とう。

 

梅田芸術劇場、アミューズ主催

1月29日まで東京・日生劇場