美しくて力強い映画。
「燃ゆる女の肖像」は、目も心も
わしづかみにしてしまう圧倒的な作品だ。
舞台は、18世紀のフランス、ブルターニュの孤島。
画家のマリアンヌ（ノエミ・メルラン）は、
この島の貴族の館にやってくる。
館の娘エロイーズ（アデル・エネル）の
見合い用の肖像画を描くためだ。
(c) Lilies Films.
エロイーズ自身は、縁談には乗り気でなく、
モデルにもなろうとしない。
それでも、マリアンヌはなんとか肖像画を完成させるが、
絵を見たエロイーズに出来ばえを批判されてしまう。
今度は、エロイーズと対峙しながら、
マリアンヌは肖像画を描き直すことになった。
キャンバスをはさんで向かい合う二人は、
文学や音楽の話をし、生身の女性として
魂をぶつけ合い、共感していく。
そんな二人は、やがて恋に落ちるのだったが。
(c) Lilies Films.
女性同士のラブ・ストーリーだ。
でも、それ以上に、自由に向かって羽ばたこうとする
二つの魂の物語と言ってよさそう。
時代は、フランス革命以前。
女性が画家になることも、自由な結婚をすることも
難しかった頃だ。
エロイーズの母親が留守中に、
二人が下働きのソフィー（ルアナ・バイラミ）と共に
楽しい遊びの時間を過ごすシーンがある。
それは、ある種のユートピアのよう。
その時間、その場所だけは、社会のくびきから
解き放たれた自由な女性たちのものだから。
(c) Lilies Films.
このシーンだけでなく、あらゆるシーンが
考え抜かれ、光と影を繊細にとらえた
映像でつづられる。
効果的に使われるヴィヴァルディの曲も印象的だ。
脚本・監督はセリーヌ・シアマ。
カンヌ国際映画祭など、さまざまな映画祭での
受賞も納得の、見ごたえある作品。
個人的には、今年のベスト３には入りそうな。
配給：ギャガGAGA
12月4日（金）から、TOHOシネマズシャンテ、
Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー