なんだか、すっごく良くなっているのだ。
ミュージカル「ビューティフル」、
3年ぶりの再演舞台のことだ。
サブ・タイトルに
「ザ・キャロル・キング・ミュージカル」
とあるように、シンガーソングライターの
キャロル・キングの半生を、彼女が生んだ楽曲で
綴る、カタログ・ミュージカルだ。
平原綾香のキャロル (写真提供:東宝演劇部)
カーネギー・ホール出演を果たした
キャロル(平原綾香、水樹奈々のWキャスト)が、
これまでを回想するという形で、ドラマが始まる。
ニューヨーク・ブルックリンに住む16歳のキャロルは、
作曲家を目指している。
カレッジで出逢ったジェリー・ゴフィン(伊礼彼方)と
恋に落ち、曲作りでもコンビを組む。
キャロルが作曲、ジェリーが作詞を
手がけた楽曲は、次々にヒット。
ただ、結婚し子供ももうけた二人の仲は、
順調とは言えなくなってくる。
ジェリー役は伊礼彼方 (写真提供:東宝演劇部)
ドラマを紡ぐのは「ソー・ファー・アウェイ」はじめ
キャロル・キングのヒット曲に、
「ウィル・ユー・ラブ・ミー・トゥモロー」「ロコモーション」
ほかのキャロル&ゴフィンのヒット曲。
加えて、「オー、キャロル」など60年代のヒット曲が
いくつも織り込まれる。
続々と繰り出される楽曲を聞いているだけで、
もう嬉しさいっぱいなのだけれど、
さらに、今回は初演より豊かな舞台になっていて、
嬉しさがいや増す。
中川晃教とソニン (写真提供:東宝演劇部)
楽曲もストーリーも動きも同じなのに、
舞台の味わいが深くなっているのだ。
こなれた、と言えば、いいのだろうか。
出演者たちが、3年分のキャリアを経て
演技が濃密になっているのは、確か。
Wキャストのキャロルは、
平原綾香しかまだ見ていないのだけれど、
ナチュラルな演技と自在な歌唱に圧倒された。
クライマックス近くで歌う
「ナチュラル・ウーマン」にはゾクっときてしまった。
キャロルの友人にして、良きライバルとなる
バリー(中川晃教)とシンシア(ソニン)が、
息ぴったりに軽やかな笑いを生み出している。
この二人が、ストーリーに緩急のリズムを
つけているようにみえる。
剣幸や武田真治が、いいアクセント。
ドリフターズ役の伊藤広祥、神田恭兵、長谷川開、東山光明
(写真提供:東宝演劇部)
さらに、アンサンブルの充実度がアップ。
一人がさまざまな役を演じているなかで、
ひとつひとつの役と瞬間を
大切に演じているのが、よく分かる。
演出リステージを手がけた
上田一豪の目配りも感じる。
同じ作品が、キャストは同じまま、
こんなに素敵に進化するのか、と
嬉しい驚きの舞台。
水樹キャロルも早く見たいな。
11月28日まで帝国劇場。