東京国際映画祭も、残すところわずか。

あまりフォローできてないのだけれど…。

オープニング上映に選ばれた作品

「アンダードッグ」はとても鮮烈だった。

 

 一度は日本チャンピオンを目前にした

ボクサー、末永晃(森山未來)。

落ち目の今もアンダードッグ(かませ犬)として

ボクシングにしがみついている。

 

©2020「アンダードッグ」製作委員会

 養護施設で育ち、かつての末永に影響を受けて、

ボクサーを目指したのが、大村龍太(北村匠海)。

デビュー戦以来勝ちを重ねてきた彼だが、

過去の因縁からボクサー生命を脅かす大けがを負う。

 

 お笑い芸人の宮木瞬(勝地涼)は、

大物俳優の父の七光りで芸能界デビューしたものの、

ブレイクできないハンパなポジション。

TV番組の企画で末永と試合をすることになり、

芸人としての起死回生をかけるのだが。

 

©2020「アンダードッグ」製作委員会

 それぞれに自分を探し、未来を手探りする3人の

思い、友情にも似た同志愛を

交錯させながら、ドラマは進む。

3人にからむ家族や仲間との愛や葛藤も

しっかりと織り込まれている。

 

 まあ、その分、映画が長くなるのは当然。

前編と後編に分かれていて、それぞれが2時間越え。

でも、見入ってしまって長さは感じない。

前編は末永と宮木の話に、、

後編は末永と大村の話に、軸が置かれている。

 

©2020「アンダードッグ」製作委員会

 前後編どちらも、見せ場はやっぱりクライマックスの

ボクシング・シーン。

もともと身体能力の高い森山未來と

リズム感抜群の北村匠海が

それぞれにトレーニングを積んで挑んだ

ボクシング・シーン(後編)は、迫力とある種の美しさがある。

やはりトレーニングを積んで撮影に臨んだ勝地涼と

森山未來のボクシング・シーン(前編)には

どこか哀しみを帯びた熱があふれる。

 

 どちらのシーンにも、胸を揺すぶられ

ちょっとウルっとして、最後には感動してしまったりする。

ドラマ自体は、もっと広範な人生を描いているのだけれど、

ボクシングって、なんだか不思議なインパクトがあるなあ、と。

 

©2020「アンダードッグ」製作委員会

 

 社会的には「アンダードッグ」とみなされても

誰の人生も「アンダードッグ」ではないんだよ、と

語りかけてくるような作品。

「百円の恋」「全裸監督」の武正晴監督らしい

クールなタッチと温かな視線が同居する映画だ。

 

 東京国際映画祭のオープニング・セrモニーの挨拶には、

武正晴監督と北村匠海が登壇、

森山はダンス公演に出演中のため映像で参加した。

作品は、近く劇場公開される。

 

配給:東映ビデオ

11月27日(金)からホワイトシネクイント他で[前・後編]同日公開