ストックホルム・シンドローム(症候群)という言葉、

きっと聞いたことがあると思う。

立てこもりや監禁事件で、被害者が加害者に

シンパシーや好意に近い感情を持ってしまうことだ。

これは、生存本能から生まれる感情なのだとか。

まあ、精神科医でも学者でもないので、雑な知識なのだけど。

 

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 その「ストックホルム・シンドローム」の語源になった

実際の事件を映画化したのが、

この「ストックホルム・ケース」。

1973年に起こった銀行立てこもり事件を描いたものだ。

 

 銀行襲撃事件の緊迫感も、たっぷり。

ドキドキするほどスリリング。

だのに、どこかユーモラスで、時々クスッと笑ってしまう。

オフ・ビートなコメディと言ってはは

言い過ぎだと思うけれど、そんな味わいもある面白さだ。

 

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 1973年、ストックホルムの銀行が昼日中、強盗に襲われた。

主犯は、小悪党のラース(イーサン・ホーク)。

アメリカに憧れ、アメリカに渡るための資金を奪おうとしたのだ。

銀行員3人を人質に立てこもり、ワル仲間グンナー(マーク・ストロング)を

刑務所から釈放させたまでは、まあ順調だった。

 

 逃走資金100万ドルと逃走用の車を要求したものの、

警察当局はのらりくらりと時間稼ぎをしている。

封じ込めて、あの手この手の方法で人質救出と

犯人逮捕を強行する作戦なのだ。

 

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 閉じ込められた強盗犯と銀行員たちは

奇妙な連帯感を持っていく。

特に、幼い娘を持つビアンカ(ノオミ・ラパス)と

ラースの間には、家族の話をするほど親近感が芽生え、

ビアンカは警察からラースをかばうような行動さえとるのだった。

 

 イーサン・ホークが、ほんと、いい味。

「ビフォア・サンライズ」3部作みたいな、繊細なラブ・ストーリーも

似合うけれど、ポップなコメディもやれる人だしね。

落ちこぼれ人生に活路を拓こうと、とんでもない事件を起こす

主人公の、どこかマヌケな面や温もりのある人間臭さが

じわじわと伝わってきて、最後はちょっと肩入れしたくなってしまう。

あらら、マズい!私もストックホルム・シンドローム?

 

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 クライム・サスペンスの顔も持つヒューマン・ドラマ。

全編を彩るボブ・ディランの曲が、素晴らしい。

「新しい夜明け」「明日は遠く」「トゥービー・アローン・ウィズ・ユー」

などなどの名曲が、時代の空気と主人公たちの心情を醸して、

ちょっとしたミュージック・ヴィデオの感。

この面でも、楽しめること、間違いなし。

 

ロバート・バドロー監督、脚本。

 

11月6日(金)から東京・ヒューマントラストシネマ渋谷、

シネマート新宿、UPLINK吉祥寺ほかでロードショー