ついに開幕。

「オペラ座の怪人」東京公演だ。

10月24日に初日を迎えたこれは、

新たにオープンしたJR東日本四季劇場[秋]の

こけら落とし公演。

 

 東京では7年ぶりの「オペラ座の怪人」。

初演からもう何十回も見てきているけれど、

やっぱり素晴らしい。

とくに今回の公演は、入念に磨きがかけられて、

輝きぶりもひときわだ。

 

撮影:阿部章仁

 

 そりゃあ、そうだと思う。

こけら落とし公演というのもあるけれど、

コロナ禍で7月14日予定だった初日が遅れ、

長い雌伏の時間を超えて、ようやく初日に漕ぎ着けたのだもの。

上演する側も、見る側も気合が入ろうというものだ。

 

 必要ないとは思うけれど、念のためにストーリーを。

19世紀半ばのパリ・オペラ座を舞台に、

地下に潜む怪人と、歌姫クリスティーヌ、

彼女の幼なじみラウルとの恋を描いたものだ。

ガストン・ルルーのゴシック・ミステリーが

脚色とロイド=ウェバーの音楽を得て

ロマンティックなラブ・ストーリーに生まれ変わった作品。

 

 オープニング、舞台上のシャンデリアに灯りが入り、

劇場の天上まで登っていくシーンところで、

オーヴァーチュアの壮麗な響きに包まれる。

 

 この日(私が見たのは、開場式の後に上演された

プレビュー公演。10月23日)のキャストは、

ファントムが佐野正幸、クリスティーヌが山本紗衣。

安定のコンビだ。

佐野ファントム、相変わらず素敵な歌声だし、

演技がますます繊細。ラストの切なさときたら・・・。

山本クリスティーヌ、歌もだけど、芝居が自在。

ヒロインの心の揺れ、そして意外な大胆さまで、手に取るよう。

 

撮影:阿部章仁

 

 個人的な注目キャストは、加藤迪のラウル。

初ラウルなのだ。

加藤迪は、鉄板のマンカストラップ@「キャッツ」だったので、

ちょっと意外な気もしたけれど、長身が映えて似合う。

歌唱の芯がしっかりしているので、

重唱のなかでも聞き映えがする。

特に「ノート~プリマドンナ」のナンバーとか。

(あ、これはコアなファンしか分からない例かも。)

 

 劇場支配人のアンドレ(増田守人)、フィルマン(平良交一)まで、

他のキャストも良かったのだけれど、長くなるのでこのへんで。

 

 生オーケストラ(指揮:濱本広洋)が嬉しい。

生オケの音は、劇場の空気と一体化して

見る者を作品世界に一気にワープさせてしまう。

そんな気がする。

2幕になると、少しハズした箇所もあったけれど、

それも含めて、生の醍醐味。やっぱり嬉しい。

一期一会の臨場感、だもの。

 

 こけら落としにふさわしい絢爛の舞台。

幸せな時間だった。

 

東京・浜松町のJR東日本四季劇場[秋]でロングラン中。