ああ、分かる、分かるな~。

と、見ながら、いちいち、うなずいてしまう。

映画「82年生まれ、キム・ジヨン」のことだ。

 

 原作は、韓国で130万部も売れ、

日本でも話題になった同名小説。

読んだ人も多いのではないだろうか。

 

© 2020 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved

 

 主人公ジヨン(チョン・ユミ)は、一児の母親。

結婚を期に退職、出産し、専業主婦として

平凡だが穏やかな日々を送っている。

けれど、時に息苦しいような思いにさいなまれてもいる。

 

 ある日、ジヨンは奇妙な行動をとり始める。

まるで別人格が乗り移ったようにもみえる。

心配した夫のデヒョン(コン・ユ)が

精神科でj受診をするよう勧めても、

ジヨンは「疲れているだけ」と一蹴する。

けれど、”症状”は日を追って進んでいく・・・。

 

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 かつては一人の女性として社会と繋がっていた主人公が、

いまは誰かの妻、誰かの母でしかないという、もどかしさ。

ジヨンの生きづらさは、全ての女性が共有するものだろう。

いや、女性だけではない。

夫のデヒョンはじめ男性もまた社会的通念との

ギャップに悩んでいるのだ。

 

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 夫や実家の家族、義母たちとの絆や葛藤。

もと同僚との交流。それらを経て、

ジヨンが自分らしく自然な一歩を踏み出していく

ラストに、希望が光る。

 

 それにしても、女性の生きづらさは

まだまだ根深いものがあるんだなあ、と、ちょっと溜息。

とはいえ、映画自体のトーンは明るい。

登場人物が、それぞれに価値観は異なっていても、

基本的に優しく温かい人物ばかりだからだろうか。

 

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 シリアスなテーマにちゃんと向かい合いつつ、

生活の機微を軽やかに、また丁寧に描いていく

キム・ドヨン監督の手腕もある。

これが長編デビューの女性監督。今後にも注目だ。

 

女性はもちろん、男性にも見てもらいたい作品だ。

 

配給:クロックワークス

10月9日(金)から新宿ピカデリーほか全国ロードショー