日比谷のシアタークリエで上演中の

ミュージカル「Gang Showman」。

本来は、全く別の作品の予定だったのだ。

けれど、コロナ禍の中、それにふさわしい新作を、

となって、出演者はそのままに生まれたのがこの作品だ。

 

 そんなわけで、主人公のジェイムズ(屋良朝幸)は、

潔癖症で高所恐怖症で金属アレルギーというキャラ。

人が近付くのを嫌うので、登場人物みんなが

フィジカル・ディスタンスをとらざるを得なくなる、

という、笑える設定だ。

 

写真提供:東宝演劇部

 

 80年近く前のニューヨーク・マンハッタンの下町。

名門クラブが存亡の危機に陥っていた。

経営者が多額の借金を残して亡くなったのだ。

後を継いだ一人娘メアリー(平野綾)は、

素晴らしいショーを作ってお客を集めようとする。

 

 借金の取り立てに来たギャングのジェイムズ、

子分の二人(中村浩大、鯨井未呼斗)も、

ボスの命令でショーに参加。

亡き経営者と契約をしていたという

二人の男(中山秀征、玉野和紀)や、

元ストリッパーのリンダ(妃海風)も加わり、

てんやわんやのなかショー創りが始まる。

 

 登場人物は、本当に距離を保ち続けての舞台。

それでも違和感がなく、舞台にスカスカ感がないのは、

どっさり織り込まれたタップダンスのおかげかも。

ダンス、それも音を生み出すダンスが

空間もドラマ進行の隙間も埋めている感じなのだ。

 

 時代設定もあるけれど、

チャップリン映画の名曲「スマイル」を使ったり、

名画をほうふつさせるシークェンスがあったり、

ちょっぴりノスタルジックな雰囲気の舞台だ。

玉野和紀の振付(脚本・作詞・演出も)も、

その時代らしく柔らかでエレガント。

 

 屋良朝幸、もとよりダンスがうまい人だけど、

タップに軽やかさと洒脱さが加わった印象。

中山秀征、入野自由、あんなにタップできるなんて

知らなかったなあ。

他に、花乃まりあ、松平和希が出演。

生バンドの音が、うれしい。

 

10月3日まで、東京・日比谷シアタークリエ。