すごく密度の高い1時間25分だ。
もちろん、映画「シリアにて」の上映時間である。
映画は、夜明けから夜明けまでの24時間を追う密室劇。
実にスリリングで、息をころして見入ってしまう。
(c) Altitude100 – Liaison Cinématographique – Minds Meet – Né à Beyrouth Films
シリアの首都ダマスカスのアパートメントの一室。
主婦オーム(ヒアム・アッバス)と家族が暮らすそこには、
隣人のハリマ夫妻とその赤ん坊も身を寄せている。
そう、彼女の家はいわばシェルター。
時に爆弾の音が響き渡り、
一歩外に出ればスナイパーに狙い撃ちされる。
しかも、強盗が窓を割って押し入ってきたりもする。
そんななかで、オームは細心の注意をはらい、
強い意志と、時には辛い妥協もしながら
家族や隣人を必死で守っている。
(c) Altitude100 – Liaison Cinématographique – Minds Meet – Né à Beyrouth Films
とても緊密にできた密室劇だけれど、
実はそれだけではない。
内戦の悲劇を、一人の女性の視点から描いた作品なのだ。
戦闘シーンなんて全くないけれど
死と隣り合わせにある過酷な日常を綴ることで、
内戦そのものの苛烈さ、その現実をあぶり出していくのだ。
24時間を生き延びても、次の24時間が続く。
重い主題を持つ作品だけれど、見てて重さは感じない。
非日常のなかでも、テーブルを囲んで食事をしたり、
おじいちゃんと孫の交流があったりと、柔らかな日常が
織り込まれて、人間の強さに感じ入ったりもするからだ。
(c) Altitude100 – Liaison Cinématographique – Minds Meet – Né à Beyrouth Films
ベルリン映画祭観客賞など、世界中の映画祭で
賞を撮りまくっているのも、うなずける作品。
監督は、ベルギーのフィリップ・ヴァン・レウ。
配給:ブロードウェイ
8月22日(土)から東京・岩波ホールでロードショー。
全国順次公開。