17歳の少年が殺人を犯した―ー。
そんな衝撃的な実話に想を得て作られたのが、
映画「MOTHER マザー」。
ショッキングな実話とは距離を置き
母と子の微妙な絆を描く、切ない物語だ。
©2020「MOTHER」製作委員会
シングルマザーの秋子(長澤まさみ)は、定職もなく
行き当たりばったりの暮らしを送っている。
男にだらしなく、ホストの遼(阿部サダヲ)とはくっついたり離れたり。
息子の周平(郡司翔)は、そんな母親に翻弄されて育つ。
©2020「MOTHER」製作委員会
身内からも疎まれ、秋子はいっそう落ちぶれ孤立する。
そんななかで17歳になった周平(奥平大兼)は、
妹を守ることと学ぶことに光を見出していく。
けれど、秋子は彼に強い執着を見せ、相変わらず翻弄する…。
©2020「MOTHER」製作委員会
正直、快いとか温かいといった言葉とは、全く縁遠い話。
それでも、これは、切ないラブ・ストーリーなのだ。
周平も、秋子も、生きるために必要な愛を求めて、
もがき続けているのだから。
二人には、共依存という、ゆがんだ、だからこそ強い絆がある。
ただ、それぞれが求める愛は、どこかですれ違ってもいる。
さまよいながら生きる姿の痛々しさが、胸に刺さる。
人は、愛なくして、絆なくして生きられないものなのだよね。
周平が、保護司(夏帆)にもらった絵本を妹に読んでやるシーンがある。
その本は佐野洋子の名作「100満開生きたねこ」。
真実の愛を知るまでに100万回死んで生きる猫の話。
暗示的てきなディテールがあちこちにちりばめられ、心に悲しい棘を残す。
主演・長澤まさみの女優力がすごい。
長澤まさみの女優力がすごい。
身勝手でだらしない、どうしようもない母親を、あっけらかんと演じて、
ドラマをジトつかせないのが、いいのだなあ。
阿部サダヲの醸すチンピラ感、ハンパない。
ズルくて、情けなくて、ほんっとクズなんだけど哀切感が漂う、
って、やっぱり阿部サダヲならでは。
そして、オーディションで選ばれた新人・奥平大兼の目力。
新人賞を総なめにしちゃいそう。
大森立嗣監督、好調だ。
配給:スターサンズ/KADOKAWA (C)2020「MOTHER」製作委員会
7月3日(金)、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開