今頃は、宝塚宙組公演「アナスタシア」の稽古進行具合などが
もれ伝わってきてもよい時期だったのに。
6月に宝塚大劇場で公演される予定だったのだから。
3月に東京・シアターオーブで上演された「アナスタシア」(梅田芸術劇場製作)と、
いわば競作になる舞台なので、常にも増して楽しみにしていたのだ。
梅芸版「アナスタシア」も、気の毒な上演状況となった。
3月1日の初日が自粛で遅れ、9日に開いたものの3日間の上演後
再び自粛休演。ようやく20日に再開したのに8日間で公演は終わり、
大阪公演は中止となったのだ。
ミュージカル「アナスタシア」は、2017年ブロードウェイ初演作。
元になったのは20世紀フォックスの同名アニメーション(97)。
ロシア革命で銃殺されたと思われていたロマノフ家の皇女アナスタシアが
実は生き延びて記憶喪失になったいた、という設定から始まる物語だ。
(アナスタシア:葵わかな)
記憶を失いアーニャ(葵わかな、木下晴夏)と名乗る少女を、
詐欺師ディミトリ(海宝直人、相葉裕樹、内海啓貴)とヴラド(大澄賢也、石川禅)は
アナスタシアに仕立てようとする。
パリに住むアナスタシアの祖母が、孫娘探しにかけた賞金を
だまし取ろうとしているのだ。
そんななかアーニャの記憶が少しずつ蘇ってくる。
アニメ版で暗躍する魔術師ラスプーチンの代わりに、
ミュージカル版では革命政府の将官グレブ(山本耕史、堂珍嘉邦)が敵役となる。
アナスタシアとディミトリのラブ・ストーリーが、より前面に出た作りだ。
演出(ダルコ・トレスニャック)はじめメイン・スタッフは
ブロードウェイ・オリジナルと同じ。
オリジナル版(ブロードハースト劇場)より舞台空間が広いためか、
背景のLEDスクリーンがダイナミックで、ドラマ背景にスケール感がある。
ダブル、トリプル・キャストだけれど、葵アナスタシア、
内海ディミトリ、大澄ヴラド、山本グレブの組み合わせしか見られなかった。
葵わかなが「ロミオ&ジュリエット」(19年版)からグンと成長した印象。
歌もいいけど、演技に体温と緩急があるのだね。
グレブってキャラクター、オリジナル版からちょっと曖昧なんだけど
山本耕史がうまいので、なんとなく見せてくれた。
(グレブ:山本耕史)
グレブのキャラクター、宝塚版なら明確に恋敵設定だなあ、
なんて思っていたので、宝塚版がいっそう楽しみだったのだけど…。
(マリア皇太后:麻実れい、リリー:堀内敬子)