英国の著名ミュージシャンでサイケデリックロックバンド「クリーム(Cream)」の創立メンバーであるジンジャー・ベイカー(Ginger Baker)さんが6日、死去した。80歳だった。ベイカーさんは同世代のドラマーの中で最も革新的かつ影響力のある一人とされている。と。なるほど。

こんな逸話を思い出した。

 

広告会社でバイトをしていた若い男が、ある日マネージャーに告げた。

「辞めさせてください。」

「なぜ?」

「今からドラマーになろうと思います。」

マネージャーは、彼がドラムを叩けるという話を聞いたことが無かった。

「今は叩けません。でもいずれ叩けるようになるでしょう」

その数年後、男はステージの上でドラムを叩いていた。

バンドの名前はクリームといい、メンバーにはエリック・クラプトンとジャック・ブルースがいた。

天才ドラマーのジンジャー・ベイカーは、できるかどうかを知るより先に、なりたいものになっていた。

彼はゴールだけを用意していたのだ。

 

この逸話を僕はこれまで何度思い返したかな。自分のできることから仕事を探すなんてナンセンスな話だ。考えてみてほしい。今の自分にできることなんて数えるほどしかないだろう。そんな中から仕事を選ぶなんて、あまりにも選択肢が少な過ぎる。これは若者だけに言っているのではない。いくつになっても、自分が興味を持てるもの、熱くなれるものが見つかったのなら始めるべきだ。遅いなんてことはない。遅くも無く早くも無い、思い立った今が、人生で最高のタイミングだと自分で決めて始めること。それで「いくら稼げるか」なんて考えなくていい。人生でそれが見つかったこと自体が奇跡的な宝物だし、それを宝物だと決めたあなた自身もまた素晴らしいのだから。

僕は正直、エリッククラプトンは知っていたけどクリームもジンジャーベイカーも知らなかった。でもこの逸話にはその当時かなり勇気をもらいました。

ご冥福をお祈りいたします。