シャープは、介護施設向けに、高齢者が日常生活に関わる機能を訓練する際の業務を効率化できるサービスを8月1日に始める。認知機能を刺激する20種類のゲームを提供するほか、厚生労働省が定める、訓練に必要な一連の手順などを支援する。全国の「通所サービス」施設数のうち、約5%に当たる2800施設への導入を目指す。開始するのは「頭の健康管理サービス」。入所者の関心をチェックする「アセスメント」から「訓練結果の記録・管理・見える化」まで、生活機能訓練に要する業務を国内で初めて一貫支援できる。介護現場は人手不足が深刻化しており、高まる業務改善の需要を取り込む。最低限の機器と基本ライセンスを合わせた年間利用料は、5年リースで25万円程度(消費税抜き)を想定。これに人数に応じて生活機能訓練の業務を支援するサービスのライセンス料や、付随する機器の使用料が追加で必要となると。ん~なるほど。
これは極めて微妙だね。というかダメだね。この取り組みは簡単に言えば、「ボケないように頭と体の体操ができるゲームをシャープが開発して販売する」ってことだ。まず、介護の現場で一番問題になっているのは人手不足だ。だがこのゲームを導入したところで人手不足解消にはならない。従業員の役割は他にもたくさんあるから。現在も頭と体の体操的なことは従業員主導でやっているだろうし、器具も使ったりしているだろうけど、このゲーム導入で従業員の手が大幅に空くとは思えない。なぜなら、子供が(大人もか)ゲームに夢中になるように、高齢者がかぶりつくような内容のゲームには見えないから。画像を見る限り至ってチープな作りだ。なんだか老人をバカにしているようにすら見える。これじゃあダメだね。というわけで、導入したとしても自分でどんどんやるような魅力的なモノには見えないから、従業員の手間はこれまでと大して変わらないはずだ。ツールがちょっと変わっただけで、主導するのはこれまで通り従業員になるだろうからね。
ただ、売れるか売れないかは介護施設側がこれをどう見るかによる。例えば、「他に選択肢が無い」からこれを買うか買わないかの選択に迫られれば買うかもしれない。内容が微妙でも入所検討者向けに “最新のシャープ製認知機能向上システム導入” と謳うことができるからね。まあこんな感じかな。
でも年間利用料が25万+αならもっと他のことに使った方がいいんじゃないかな。月額2万以上かかるってことだから仮に月額3万円だとすると、それだけ使えるならもっと他に可能性はある。例えばフィットネスクラブと提携してみればいい。内容云々はフィットネス側に任せて、「月に3万払ったら何してくれる?」って聞いてみればいい。「頭と体の体操」っていうテーマだけ投げておけば、頭のいいフィットネスクラブなら色々考えて提案してくれるはずだ。フィットネス側にも利はある。まだまだ頭も体も元気な高齢者を、逆にフィットネスに入会させるプランも提案できる。それ用に特別会員種別を作ってあげればいい( “シルバー会員” なんてしょうもない名前にしちゃダメだよ)。通常会員の半額くらいで設定してあげれば来やすいだろうね。
ビジネスは流れがある。時代によって上がっていく業界もあれば、下がっていく業界もある。でも下がってきた時、それを時代のせいにするのではなく、アイディアと行動力で力強く切り抜けていくべきだ。それが経営者だ。泣き言を言っても誰も助けてくれない。例えば介護もフィットネスも経営だからね。しっかり頭を使うこと。行動すること。
もう絶望だと思っても、そこからうまくいく方法なんて何万通りでもある。
