7.生きた心地 | 近野淳一説明所

近野淳一説明所

近野淳一音源の歌詞、ライナーノーツ等を掲載します。

2018年11月24日〜30日まで行われた大柴広己 / 近野淳一(鴉)/ キクチユウスケ(plane)によるShuntō Tour 2018 in winter。

このツアー限定で作った3人のスプリットCDR(1人2曲の計6曲入)に収録(現在廃盤)。

傷つけられたく無くて、自分を守るように相手の非を探すけど、それは相手だって同じで、結局傷つけ合ってしまう。

感情にかかる影がみるみる深くなっていく。

しかし完全な闇が形成される寸前のところで、無気力な声で呟かれた素直な言葉。

その言葉以外の全てが真っ白な背景に切り替わる。

一気に自分から溢れ出す、隠し持っていた不甲斐なさの数々。

争い、傷つけ合い、和解、理解、その激しいダイナミクスは鼓動と同じ。

生きているからこそ、得られる刺激。

もちろん逆もいえると思う、生きているせいでこんな辛い思いをしなければならない…とか。

ただそれでも、痛みも喜びも「生きた心地」であるという事を歌に残したかった。

そして自分の願いとして、生きた心地が命の尊さに繋がってくれれば良いと、サビの締めくくりに前向きな言葉を置きました。


2018年のスプリットCDRに収録されているのはアコースティックギターと歌のみのアレンジ、そして自分のYouTubeにも弾き語りバージョンをあげている。


つまり、聞いた事がある人には完全にアコースティックなイメージを与えてしまっていたのかもしれない。

今アルバム「自己紹介」制作に携わる人間から「生きた心地のアレンジに少し違和感がある」「最初の弾き語りバージョンではダメなのか?」「アルバム全体を通して一曲くらいしっとりしたアレンジがあってもいいのではないか?」といったような意見があった。

そして当初、この曲は弾き語りで収録すると、自分でも制作の打ち合わせの段階では話していた。

そう、「アルバム全体を通して一曲くらいしっとりしたアレンジがあってもいいのではないか?」というのは自分的にも全然共有できていた意見だった。

はずだった…。

でも実は2018年のツアー限定音源の時は、時間がなくて仕方なく弾き語り風アレンジにしただけで、本当に頭の中で鳴っていたのは今回アルバムに収録したようなバンドサウンドだったのだ。


アルバムのタイトル「自己紹介」についてもう一度考える。

就職の面接に使う履歴書的な自己紹介なら、自分をよく見せようと間違いなくアコースティックバージョンを選ぶだろう。

でも今回はそれじゃない。

初めて会う人、すでに知る人にも今一度、このタイミングで長所も短所も伝えておきたい。


だからこの曲は変な話、「嫌われても良い」くらい悔いのないアレンジに仕上げました。


もし違和感があったなら、是非ライブに聞きに来て欲しい。


そもそも、自分は弾き語りをする人間だが、残念ながら弾き語りの音源を聞く趣味がない。

自分の中で、弾き語りの魅力とは頭の中で鳴っているバンドサウンドをギター一本と歌だけで、想像してもらえるような表現ができるところであり、別にギター一本と歌だけのサウンド自体には興味がないのである。


そもそも2013年、自身のバンド「鴉(からす)」をもっと幅広く知ってもらうためにスタートしたのが近野淳一ソロ。

今となってはソロも定着し、バンドだけではなかなか生計が立てられない中、それに比べ経費が安いソロのおかげでなんとか「プロ」として生かされている。


ただ、あれから10年以上経っても未だ、弾き語りの音源への興味は薄く、むしろソロをやる事でバンドがより楽しいものになった。


それでも、いつかきっと弾き語り音源、フォークの世界にハマる時が来るはず。


現状の自己紹介が今ここなのだ。