2021年3月16日に、『すばらしき世界』と『三年目のデビュー』と

いう二本の映画に関するレビューをアップしました。

【参考】

『すばらしき世界』&『三年目のデビュー』のレビュー

 

 

で、今回は、この2月、3月に公開された映画二本のレビューを

お届けします。

 

 

○1本目;映画 『すくってごらん』

 

 

【鑑賞形態】

東京郊外のシネコン(スクリーン3)で観ました。

 

【鑑賞の動機】

・日本映画としては珍しい、コメディタッチのミュージカル映画

と聞いたため。

・金魚と言えば(奈良県の)大和郡山市。その大和郡山市を

始めとした奈良県各地の趣のある街並みがたくさん登場す

る映画と、聞いたため。

 

【レビュー】

・些細なことにより左遷され、東京本社から片田舎の町へやっ

てきた大手メガバンクのエリート銀行マン・香芝誠。荒んだ気持

ちを抱えていた香芝は、左遷初日に金魚すくいの店を営む美女・

吉乃と運命的な出会いを果たし、彼女に一目ぼれをする。生来

のネガティブな性格と左遷のショックから心を閉ざし、仕事だけ

を生きがいに生きていくことを心に決めていた香芝だったが、吉

乃のことがなかなか頭から離れず、なんとか彼女と仲良くなろう

とするが……。

すくってごらん:作品情報-映画.com より引用

 

というようなストーリーです。

 

・で、肝心の劇中歌ですが、冒頭の「左遷銀行員」から始まって

エンドロール前の「この世界をうまく泳ぐなら」までの全15曲。

いやぁ~、楽しくて、情感にあふれ、そして少し切なさも感じさせ

て、このミュージカル映画をスムーズかつエモーショナルに進行

させてくれます。

(ちなみに、歌詞は基本的に字幕で表示されます。)

 

・歌舞伎役者である尾上松也さん(銀行員香芝役)の軽妙であり

ながらもペーソスを漂わせる歌唱力と(何せラップまで披露してま

すからね…)、ピアノ経験ゼロの百田夏菜子さん(吉乃役)が特訓

を重ねたガチのピアノ演奏が、音楽的には一番の見所でしょう。

 

あと、香芝を好きになってしまう地元のカフェ店員明日香役の石

田ニコルさんが、演技も歌も最高の助演ぶりです!

 

・美しいだけでなく妖艶さまで感じさせる金魚や、奈良県橿原市

(かしはらし)今井町に現存する町家を中心としたステキな街並

みといったビジュアル面と、全15曲の劇中歌(プラス百田さんが

役名で歌う主題歌)という音楽面との最高のマリアージュが、こ

の『すくってごらん』でした(*^_^*)。

 

コロナ渦に苛(さいな)まれたこの一年においては、『すくってごら

ん』が、(ワタクシ的には)最も心を弾ませてくれた映画でした。

 

・現在、上映館は少なくなってしまいましたが(私の地元のAEON

にあるシネコンでは既に上映終了です…)、4月1日(木)までは上

映している劇場もありますので、ご興味のある方はお急ぎください

ませ。

 

【参考①】

映画『すくってごらん』公式サイト

 

【参考②】

映画 『すくってごらん』予告編

 

映画 『すくってごらん』予告編(バレンタインver.)

 

【参考③】

金魚の名産地・大和郡山市を紹介する記事

 

 

 

○2本目;映画 『あのこは貴族』

 

 

【鑑賞形態】

吉祥寺のシネコン(スクリーン4)で観ました。

 

【鑑賞の動機】

・原作が、富山県出身の閨秀(けいしゅう)作家山内マリコさん

の同名小説であったため。

(本ブログでも、以前、山内マリコさんの別の小説&その実写

映画について取り上げています。)

山内マリコ著『ここは退屈迎えに来て』&その実写映画について

 

・金沢市在住の女性映画監督岨手由貴子(そでゆきこ)さんが

自ら脚本も担当するため、この原作小説を、どのようなシスター

フッド(sisterhood)映画に創りあげるのかに、興味があったため。

 

【レビュー】

・東京に生まれ、箱入り娘として何不自由なく成長し、「結婚=

幸せ」と信じて疑わない華子。20代後半になり、結婚を考えて

いた恋人に振られ、初めて人生の岐路に立たされる。あらゆる

手立てを使い、お相手探しに奔走した結果、ハンサムで良家の

生まれである弁護士・幸一郎と出会う。幸一郎との結婚が決まり、

順風満帆に思えたのだが……。

一方、東京で働く美紀は富山生まれ。猛勉強の末に名門大学に

入学し上京したが、学費が続かず、夜の世界で働くも中退。仕事

にやりがいを感じているわけでもなく、都会にしがみつく意味を見

いだせずにいた。

幸一郎との大学の同期生であったことで、同じ東京で暮らしながら、

別世界に生きる華子と出会うことになる。2人の人生が交錯した時、

それぞれに思いもよらない世界が拓けていく―。

映画『あのこは貴族』公式サイトより引用)

 

というようなストーリーです。

 

・岨手監督が手がけた脚本は、原作を上手に脚色していきますが、

映像的な”通奏低音”とも言うべき工夫は、「雨」と「車中からの映像」

でしょう。

 

華子(門脇麦さん)が遭遇する多くのシーンは、たとえステキな男性

である幸一郎(高良健吾さん)と初めて出会うシーンにおいても、雨

模様でした。

また、(渋谷区の)松濤という高級住宅街に住み都内の移動はほぼ

タクシーという華子の場合は、そのタクシーからの超都会的な風景

が、富山に帰省して弟のクルマに乗って帰宅する美紀(水原希子さ

ん)の場合は、ヤンキー気質の弟が乗り回すクルマからのシャッター

通りが続く寂れた田舎町の風景が、それぞれ印象的にスクリーンに

映し出されます。

(ちなみに富山でのロケ地は、魚津市だったようですが…。)

 

・社会学用語で言う Class(階層)が違う華子と美紀の各生活につい

て、当然のことながら小説においては、ディテールの積み重ねで描写

され、その緻密さは、「さすが山内マリコさん!」とも言うべき筆致です。

 

対して岨手監督は、映像アートの特質を出し切って(上述した「雨」と

「車中からの映像」はその一例です)、二人のヒロインの日々の生活

実態や行動様式を見せてくれるわけです。特に華子が属する東京の

セレブリティとも言うべき”上級国民”の生活ぶりには、驚嘆するばか

りですが……。

 

・(上述したように)「2人の人生が交錯した時、それぞれに思いもよら

ない世界が拓けていく―」(映画公式サイトより引用)の詳細について

は、ネタバレになりますので、ここでは語れませんが、最終的には、観

客としても大いに共感できるシスターフッド(sisterhood)映画になってい

たことだけは、ここに記させていただきます。

 

・最後に……。

華子の親友である逸子役を演じた石橋静河さん、美紀の親友である

里英役を演じた山下リオさんのお二人が、この映画では間違いなく助

演女優賞でしょう!

華子と美紀という両ヒロインの間に、sisterhood=「女性同士の連帯や

絆」なるものが生じたとするならば、その立役者は、まさしく、親友であ

るこのお二人です。

お二人とも、その立役者ぶりを、存在感を持って上手に演じていました。

 

・そもそも全都道府県での上映がなかった映画ですが、この映画も、4月

1日(木)頃までは上映している劇場もまだありますので、ご興味のある

方はお急ぎくださいませ。

 

【参考④】

映画『あのこは貴族』公式サイト

 

【参考⑤】

映画 『あのこは貴族』予告編

 

 

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