コロナ禍のために観劇数自体が極端に減っていますので、
久しぶりの観劇レビューとなりますが、先月中旬に劇場に
足を運んだ扉座さんの公演について、感じたことを書かせ
ていただきます。
■ 『リボンの騎士2020~県立鷲尾高校演劇部奮闘記~
ベテラン版 with コロナ トライアル』 <Bチーム>
(すみだパークシアター倉こけら落とし公演)
(劇団扉座第67回公演)
(原作 手塚治虫)
(脚本・演出 横内謙介)
(共同演出 鈴木里沙)
【2020年度(2020年4月-2021年3月)の観劇通し番号 No.5】
【2020年度下半期(2020年10月-2021年3月)の観劇通し番号 No.1】
【2020年1月からの暦年の観劇通し番号 No.23】
【鑑賞日時 2020年10月17日18:03 -20:35】
19:14-19:25 休憩あり(劇場内の換気等のため)
【チケット代金(前売・指定)4,000円】
(於 すみだパークシアター倉(そう))
【短評…と思っていたら、すごく長くなってしまいましたが(苦笑)…】
(1)
扉座さんにとってもコロナ禍の影響は大きく、6月に予定していた『お伽
の棺2020-三つの棺-』は公演中止となりました。
そして、この『リボンの騎士2020』は、元々はオーディションで若手俳優
を募る新人公演の予定だったのですが、横内謙介氏(扉座主宰)の、
「このまま座して死を待つより、ギリギリまで足掻(あが)いて、with コロナ
にトライしないか?」(当日パンフの主宰挨拶文より引用)という呼びかけ
に劇団員が応え、いわば扉座の「劇団力」(同上)を見事に示した公演が
実現したわけです。
(これで、「ベテラン版 with コロナ トライアル」というお芝居の副題の意味
がおわかりかと思いますが…。)
(2)
そんなわけで、コロナ対策は徹底していました。
ハード面で言えば、体温チェック、手指消毒、靴裏消毒、客自らのチケ
ット半券切り離し……等を経て劇場内にやっと入れるわけですが、座
席も”市松模様”的にソーシャルディスタンスが取られ、さらに前方二列
(A列・B列)の客席には個包装されたフェイスガード(下の画像参照)が
置かれていて、A列・B列の観客は must 着用でした。ちなみに、私もそ
の対象者でしたが……。
※ 私自身メガネ人間なので、「メガネの上にさらにメガネ?!」って、
一瞬思いましたが、いざ着用してみると全く窮屈ではなく、おかげさま
で、快適かつ心理的に安心して観劇に専念できました。
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(3)
でも、「このくらいの対策だったら、今時どこでもやってるのでは…」と
いうご指摘も、当然かと思います。
が! 何と扉座の場合は、公演のソフト面(お芝居の中身)においても、
コロナ対策をしっかりと施していたのです(^_^)v。
具体的に言うと、応援団の迫力あるパフォーマンスシーンや、鷲尾高校
の生徒総会シーン等、<多数のキャスト&密集&飛沫が飛ぶ可能性>
というシチュエーションにおいては、演出面でも、コロナ感染防止策を大
胆に採用していました。
具体的に言うと、リアル応援団員はミニマムとして、他の団員はディスプ
レイに映し出される……という演出や、同様に、生徒総会自体は、議長
役の生徒会長だけが舞台にいて、他の参加者は全てディスプレイ上で
の”リモート総会”とする……等々の工夫です。
あと、10分の休憩時のみならず、劇中においても、何度も舞台奥手の扉
を開放して外気を取り入れていました。つまり、キャストが外へ逃げ出す
……というような演出に変更したわけです。
この日は「12月初旬の寒さ」の夜でしたから、観客としてはちょっと辛か
ったですが、まあ、それくらい、扉座さんは徹底して感染防止に努めてい
たわけです。
(4)
さて、では、お芝居の内容自体に話を戻します。
そもそも、この戯曲は、
「『リボンの騎士』を上演しようとする演劇部の部員たちが、現実の厳しさ
を噛みしめつつも友情を結び合い、また淡い恋に揺れながら、少しずつ大
人になってゆく姿を、仮面を被って夢見る女の子の素顔を隠し、勇ましく闘
うリボンの騎士・サファイアのイメージと重ねつつ描く、青春ファンタジー」
(扉座公式サイト・<扉座公演2000年~>・『リボンの騎士2019-県立鷲尾
高校演劇部奮闘記-』の「あらすじ」から引用)
です。
したがって、「部員たちを優しく見守る妖精的な存在として、リボンの騎士の
キャラクターたちも登場」(同上)し、手塚治虫氏の『リボンの騎士』は劇中劇
として扱われるわけです。
ちなみに私は、『リボンの騎士~県立鷲尾高校演劇部奮闘記2018~』と、
『リボンの騎士2019-県立鷲尾高校演劇部奮闘記-』を、過去に観てい
ます。
で、「2018」に関しては、以下のようなレビュー(比較的長文のレビュー)を
既にアップしていますので、よろしければご参照ください。
【参考】
<『リボンの騎士~県立鷲尾高校演劇部奮闘記2018~』のレビュー>
https://ameblo.jp/hitoe-eri/entry-12387164275.html
その際のレビューを、改めて、超ざっくりと(笑)要約すると、
①タイトルの通りの、涙あり、笑いあり、恋愛あり、友情あり、そしてその全て
を包括する感動ありの、高校演劇部奮闘譚(たん)です。
②「劇中劇」という構造や、その劇に登場するキャラクターと部員との心の「交
流」を丁寧に描いているところも、観客としては、演劇的工夫とファンタジックさ
の両方を存分に味わえて、至福のひとときとなる演劇空間が形成されます。
③それに加えて、私自身は、この作品にはさらに次の三つの魅力があると考え
ました。
<魅力~その1~>=「青春」というものを思い起こさせてくれること
<魅力~その2~>=「紆余曲折」の大切さを気づかせてくれること
<魅力~その3~>=心から謝ることの尊さを教えてくれること
……となります。
※ 上で述べたように、B列6番=フェイスガード着用でした(^_-)-☆。
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(5)
で、今回の「2020」には、(4)の①~③に記したことに加えて、さらに次の
ような特徴があるように、私は感じました。
それを列挙すると、
①コロナ禍のなかで演劇の公演を打つにあたっての一種の「理想的な
モデル」を、示してくれたこと。
←これについては、上記(2)・(3)で既に述べましたが……。
②新装成ったすみだパークシアター倉(そう)のこけら落とし公演らしく、
旧すみだパークスタジオ倉(そう)ではできなかった、縦空間(2階の回
廊等)を利用したお芝居の展開が、新鮮であったこと。
③埼玉西武ライオンズのスラッガーである山川穂高選手と風貌・体型が
共によく似ていることから、メフィスト役(Bチームキャスト)の山川大貴さ
んに演じさせた、穂高選手モノマネギャグ(笑)など、常にブラッシュアッ
プしている脚本が、やはり超楽しいこと(^o^)。
④「ベテラン版」と銘打っているだけあって、扉座のベテラン&中堅の
堅実な演技は予想通りであったが、若手俳優陣も着実に力をつけて
きていることが看取できたこと。
……となります。
で、(5)の④については、次の(6)&(7)で、もう少し詳しく述べますね(^_-)-☆。
(6)
例えば、サファイア役(シングルキャスト)の砂田桃子さんの、典雅な美
しさと(宝塚の男役のような)凜々しさを、共にきちんと舞台上に表出さ
せる演技は、「2018」の際よりもさらに洗練されているように感じました。
演劇部の1年生部員である飯室直美役(シングルキャスト)を演じた塩屋
愛実さんは、わりとエッジの効いたキャラ的な台詞においてはきちんと客
席の笑いを引き出し、また劇中劇シーンでは、頬を汚した少年役が実に
可憐でした。
同じく2年生部員である奥村里香役を演じた鈴木崇乃(たかの)さん(Bチ
ームキャスト)は、今時のJKに匹敵するようなスタイルの良さに加えて、
発する台詞のシャキシャキ感(笑)と醸し出す雰囲気とが、まさにそのまま
女子高生でした。
以上、中堅どころの俳優さん三人についてふれてみました。
※ ちなみに、先日、『伯山カレンの反省だ!!』(テレ朝)を観ていたら、
滝沢カレンさんも、このタイプのフェイスガードを着けてましたね(^^)。
【参考】
<『伯山カレンの反省だ!!』(テレ朝)の公式サイト>
https://www.tv-asahi.co.jp/hansei/
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(7)
では、若手陣の演技はどうだったのかと言いますと……。
手塚治虫氏の『リボンの騎士』を脚色したのは、2年生の演劇部員である
”けだま”(池田まゆみ)です。
彼女は、小さい頃から、(漫画のキャラである)サファイアやリボンの騎士
に憧れ、心をときめかせ、彼女らと共に日々の生活を過ごしてきたと言っ
ても、過言ではありません。
だから、”けだま”の熱き思いの空回り具合や、それを周囲の部員らと克
服していくプロセスが、お芝居の肝でもあり見所でもあるわけです。
で、今回、この”けだま”役を、若手の北村由海(ゆみ)さんがシングルキ
ャストで演じました。
今までの公演においても、どんな役でも一生懸命演じてきた北村さんら
しく(過去の公演では、役柄のために、カツラ等を使用せず自毛を大胆
に刈り上げてきた北村さんを覚えています…)、懸命に、でも変に肩に力
が入り過ぎない、メリハリのつけ方が上手な演技で、北村”けだま”像を
くっきりと創りだしていたように、私は感じました(*^_^*)。
【参考】
<北村由海さんの画像やプロフィール等;扉座公式サイト>
https://tobiraza.co.jp/actors/kitamura-yumi
※ すみだパークシアター倉(旧すみだパークスタジオ倉)に足を運
ぶと、私は必ずこのお店(加賀屋さん)の前で、スカイツリー画像を
撮ります。いわば、マイ定点観測スポットです(^_-)-☆。
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以上、短評のつもりがこんなに長くなってしまい、申し訳ありません。
2020年は確かに、「現実は思う以上に過酷で、世界は決して私たちの味方
じゃないと思い知った年」(<すみだパークシアター倉・祝 OPEN!パンフ>
掲載・「扉座一同」挨拶文より引用)だったかもしれません。
でも、やはり演劇というステージアートに関して言えば、「ライブに勝るもの
はない!」という言葉に尽きると思います。
今回、縷々述べましたように、扉座さんが、コロナ渦の下での、一種の「公
演理想モデル」を実践してくれました(^_^)v。
そのことに対して心から敬意を表し、これからも微力ながら扉座さんを応援
させていただきます。
厳しい環境のなかでの公演、本当にお疲れ様でした!!
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