その女は口を閉ざしたまま確かに誰かと話をしていた。
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四角が三角になったりしないわ。だって、三角は四角よりも角が一つ少ないわけだし、三角に角を一つ加えたら四角になるし、辺も増えるじゃない?それをずっと三角って呼び続けるのは違うと思うの。赤い紙に書いてあるとおりよ。果実の指定はなし。手袋は五組必要。斜めに引きずる必要も、それ以外の要求はないわ。以前お伝えした通り、わたしは鉛筆を削ることが大嫌いなの。だって、削るのをやめられないんだもの。尖っていることが美しい。尖っているだけでいい。ただ、美しい三角形を眺めていたいだけなの。雨の日に、雫を一つ刺せるように、いつも尖らせておく必要があるの!電話の相手のせいか?知らない人よ。いつもね。少し話せばわかるわ。なにも、灰色が関係しているって決めつけるのは早い。灰色の中に、白檀の項目があるでしょう?見落としたの?らしくないわね。白檀。白檀。大切に、火をつけて。香りで満たすの。部屋の中をいっぱいにして水を貯めて鏡を照らす。五分ほど。そうすれば現れる。捉えることが出来れば高く売れるわ。うふふ。知らないわよ、そんなこと。わたしはもう興味がないことよ。ダメよ!藁は一緒にしないで。ありがとうタバコに火をつけてくれたのはあなた?その発電装置を休めて、こちらへいらっしゃい。そう。そのままでいいわ。甘い水もあるのよ。どちらになさる?苦くても平気?少しの間だから、きっと好きになるわ。膝においてもらえるかしら。斜めにならないようにまっすぐ。
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真後ろで騒がしい。
信じられないスピードで豆大福を食べながら、ずっと話すのをやめない。いや、誰とも話などしていない。やはり、赤い唇はずっと黙ったままだった。
わたしは豆大福の豆が口からこぼれ落ちそうで落ちない様子を後頭部の目で見つめているのに忙しく、
本当にその女が誰かと、話しているかどうかは
私とは全く、関係がなかった。