その日は梅雨どきにもかかわらず雨なんか全く降るそぶりなどないようすで、空は青く青く広く気温はぐんぐんあがって昼の二時の体感温度は35℃ほどだった。例年にはない暑さのため氷アイスは飛ぶように売れ街中のコンビニエンスストア、スーパーからはスコンとなくなり夜帰宅途中のサラリーマンで見かけた人はいなかった。
俺もその一人だった。
暑さを溜め込んだ体はぼんやり熱く同じくゆらゆら熱を放つ地面を踏みしめる足の重いこと。
近所の弁当屋で弁当を買って家に帰る、いつものように、いつも通りに。夕方の風は少しずつ落ち着いて昼間より息がしやすいように思った。
昨日は徹夜で事務所に泊まり込んでしまったので家に帰るのは二日ぶりだ。彼女の家に行こうかとも思ったがそれすら余裕がなく仕方なく会社で仮眠をとった。夢の中で彼女が働き過ぎよ、と言う。
頭が朦朧としているせいか一日中流れ星がジリジリと燃えかすを落としながら仄暗い夜と朝の間の空に落ちて行く様子が思い浮かんで、その映像は幾度となく繰り返されおかげであっという間に今日の太陽は沈んでいった。
アパートの前まできたところで電話がなった。胸のポケットが閃光を放つ。
ああ、出ようかなと携帯の文字は嫁から、俺はピンと来た。ついにその時がきたようだ。
電話を切る前に部屋に入れず膝から崩れ落ちる。俺は息子が生まれた日のことをきっといつも生々しく思い出せる。遠い遠いきらきらした夜の事だった。
生温い気温と高揚した気持ちと裏腹にドアノブの、鉄の真っ白い冷たさと、宙ぶらりんな父性を持て余していた感情に素直になれた事とを。
ああ、こんな人間の誕生に俺自身が救われる事があるのだ。なんて勝手な人間なんだ、と思うと同時に今まで抱えた事の無い、たぶん呼ぶとしたら喜びだろう、気持ちが溢れてきて不安やあやふやな気分がぱあっと晴れた。本当に助かった。救われた、と強く思った。そして、俺はその日から息子と共に始める事が出来た。
俺もその一人だった。
暑さを溜め込んだ体はぼんやり熱く同じくゆらゆら熱を放つ地面を踏みしめる足の重いこと。
近所の弁当屋で弁当を買って家に帰る、いつものように、いつも通りに。夕方の風は少しずつ落ち着いて昼間より息がしやすいように思った。
昨日は徹夜で事務所に泊まり込んでしまったので家に帰るのは二日ぶりだ。彼女の家に行こうかとも思ったがそれすら余裕がなく仕方なく会社で仮眠をとった。夢の中で彼女が働き過ぎよ、と言う。
頭が朦朧としているせいか一日中流れ星がジリジリと燃えかすを落としながら仄暗い夜と朝の間の空に落ちて行く様子が思い浮かんで、その映像は幾度となく繰り返されおかげであっという間に今日の太陽は沈んでいった。
アパートの前まできたところで電話がなった。胸のポケットが閃光を放つ。
ああ、出ようかなと携帯の文字は嫁から、俺はピンと来た。ついにその時がきたようだ。
電話を切る前に部屋に入れず膝から崩れ落ちる。俺は息子が生まれた日のことをきっといつも生々しく思い出せる。遠い遠いきらきらした夜の事だった。
生温い気温と高揚した気持ちと裏腹にドアノブの、鉄の真っ白い冷たさと、宙ぶらりんな父性を持て余していた感情に素直になれた事とを。
ああ、こんな人間の誕生に俺自身が救われる事があるのだ。なんて勝手な人間なんだ、と思うと同時に今まで抱えた事の無い、たぶん呼ぶとしたら喜びだろう、気持ちが溢れてきて不安やあやふやな気分がぱあっと晴れた。本当に助かった。救われた、と強く思った。そして、俺はその日から息子と共に始める事が出来た。