「蜘蛛がおる!」
エリは布団を首元まで引っ張りあげて天井をにらんだ。
大きな声を聞き、隣の部屋のオカンが襖をシャーっと開けて
「生かしたりー!」
エリはその後もどうにかして母親に来てもらいたかったが、
大声の掛け合いを数回交わすうちに眠気に負けて寝てしまった。
明日は待ちに待った人生初の運動会。
保育所の小さい校庭なんかじゃないあの開放的な小学校の校庭。
かけっこの得意なエリは、広い校庭で風を切る事を心待ちにして、そして
少し緊張していた。
だから早めに就寝したのに、
珍客が気になったため、結局いつもどおり。
夢の中でエリは蜘蛛にまたがって先頭を切って走った。
妙な気分で目が覚めたら、予報とは裏腹に朝から哀れなほどの雨。
雨を見てエリは、何故か少しほっとして、オカンに聞こえるように残念そうに
「なあオカンー!めちゃ雨やん!最悪やわ!」
と窓を向いてニヤニヤしながら言い放った。