風が酷くって、寒くて歩いていたら顔が赤くなるよな冬の日に、あの子はやってきた。

大きな目がくるくるする、声の大きいかわいい男の子だった。

すぐに仲良くなれると思って、声を掛けにいった。もちろん、転入生がいつもそうなるように、あの子の周りにも人だかり。でもわたしはあの子が声を掛けてくれるのを待って居ることを知って居た。

休み時間ごとに意気込んで机の間を進んでも、みんなあの子を離してくれない。

とうとうその日は一言も話せずに終わってしまった。

放課後になって、いつも一緒に帰るのミイちゃんになぜかいつものように優しくできず、自分でも戸惑った。おそらく疲れていた。

うちに帰ると奥からママの柔らかい声。きっとわたしが帰るまで昼寝していたろう、幕がかかった声がした。
あゆみの好きなクッキー焼いたよ~ 食べる~
と 第二声を聞いて浮き立つ単純なわたし。

クラブというところで働くママの出勤は遅く、わたしがおやつを食べだして、アニメがほぼ終わる頃にあわただしく粉の香りを振りまきながらでてゆく。

入れ替わりにやってくるおばあちゃんとすれ違ったときはお店の夕礼に間に合わないから、出がけにおばあちゃんに会うと肝が縮むのだという。

今日は割と早いみたいで、アニメを見てるあいだに、ママは出ていったが、まだおばあちゃんは着かなかった。


そうだクッキーを食べようと皿を覗いていつものあれを摘む。


今日もいつものクッキーのはずなのに、真ん中のチェリーがやけにでかい。


ピンクのギラギラな目は、ちょっと少ないくらいがちょうどいいのに。なんだかじっと見ていても食べる気がしなくなった。
ちょっと考えたけど、手にとったクッキーを皿に戻した。



さあて、宿題でもするかぁ

って

誰も居ない部屋を相手に大きな声で呟いた。

誰かが聞いている筈も無いのに…