天麩羅を語る主人は御歳84

顔には無数の美しい皺が。
而して侮る無かれ。
物事を究むにはには切り捨てる勇気が伴うのをご存知かな? 重なる味と云うものは時には野暮といいうもの。華厳を知らぬは大人ならざりけり。

和かは全く天麩羅を甘く見ていた。 主人は繰り返し云う、

「天麩羅は、日本料理にとっては至極簡単な手法を取るのですが、懲りだしたらもう、切りがないのです。」

その素材は刺身でもいただけるが、衣で瞬間にうまみを閉じ込め。
一口めではなく、口に含んだ後に浮かび上がる“素材の風味”天麩羅を天麩羅らしくさせないためには厳選された油にあるという。
一口いただく毎に広がる甘い香りに酔いしれ、うまいと云うと、
店主は本当にありがたいというように優しく礼を言った。

プロの仕事たるもの、他人に隙を見せるるなかれ。 リズムは一定にして優しく、タイミングは自然に恣意的に。

生き方はそれぞれだけれども。
必ず犯せないこだわりが時に人を深くとらえる。


力、というものは鍛錬の果てに説得力をますものだ。

それを全身から漂わす雰囲気、これこそ本物、実直たるものの姿なり。