書いてはその紙を破り捨てて、床に投げつける。

もういい加減、15枚は一行や二行、ひどいときはその書き出した一文字だけで紙の一生涯を終わらせている。

書き損じが錯乱した部屋には、時折とても爽やかな5月の風が吹く。
その度にカサカサと紙が触れ合う音が部屋に溢れ、絶妙な暖かさを生む。

そうして書き損じをさらに15枚増やしたところでふと目を上げると時計が12時を刺していた。

多少諦め席を立った時、足に触れる丸まった紙が気になって。
しゃがみこみ一個の固まりを手に取り広げてみると。



何にもない。


どの紙にも何も書かずに捨てた事はない。
しかし次々開けた紙には何も書かれていない。


そして風が吹いたその時。

丸まった紙から文字が、細い列と為って窓から外へゆらゆら泳ぎだしていたのを見てしまった。



その様が余りに美しいので、ひとりごちてしまった。