12月だというのに、とても暖かい。
湿気を含む風が急ぐ気持ちにまとわりつく。
グローブの中が汗ばんで、外気を置いていくようだ。
こんな日に限って予想は外れ、
重厚なコートが体の熱さを離さない。
大事な商談の前には必ず白いカッターを着てくるのに、
今日はどうにも忘れてしまっている。
しかも客先の玄関でハタと気がつく。
すると不思議にも、その失敗に気付いてからはなんだか全てが
どうでも良くなってきて、
朝から自分がどれだけ緊張していたのかがわかった。
わかってしまえば後は勢いでしか乗り切れないと
小さな元担ぎを払拭すべく、
まくりたてるように話続けるとなんだかかんだで
調子が出てくるではないか。
やれやれと敵陣を去る時に、ふと見上げた白い月が
とても印象深く目に映った。
ああ、そうか。
やってみてから考えてもいい事が
沢山あるんだな、
と
当たり前の事ですら臆病になっているのに気付いたのだった。